信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 超音波法を用いたヒト静脈血管コンプライアンスの定量的評価手法の開発とその応用

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.26 Vol.26

 本研究では,伝導性静脈血管のコンプライアンスを測定する新たな方法を提案した.この方法は,静脈閉塞プレチスモグラフィ法(VCPG法)を用いた従来のコンプライアンス(Cvv)推定法に含まれる問題点を解決するために,超音波Bモード法で,膝窩静脈を直接描画し,血管横断面積(CSA)と静脈内圧(Pv)の関係から伝導性静脈血管のコンプライアンス(Cvc)を測定するものである.従って,本研究の主たる目的は,我々が開発した手法によって測定されたCvcと従来法によって推定されたCvvを比較・検討することであった.被検者は健康な成人男女12名であった.仰臥位の被検者は,右脚大腿部にカフを装着し,カフ圧60mmHgで4分間静脈閉塞を行った後,毎秒1mmHgずつの割合で0mmHgまで減圧した.この減圧期間中,超音波Bモード法とVCPG法による静脈コンプライアンス測定が行われた.両方法によるコンプライアンスは,Pv(カフ圧)が40から20mmHgへと変化する際のCSA(Cvc)および下腿容積(Cvv)の変化から,それぞれ求められた.カフ圧60mmHgでの4分間の静脈閉塞時,膝窩静脈血管は速やかに膨張し,その後4分間ほぼ定常状態を示したのに対して,VCPG法によって記録された下腿容積は定常を示すことなく増大し続けた.このことは,従来法に存在する問題点,すなわち,VCPG法による下腿容積の変化によるCvv推定には,静脈スペースに加えて細胞間隙への水分ろ過量が含まれるという問題点を確認することになった.CvcとCvvの関連性を検討したところ,有意な正の相関関係(p<0.05)が認められた.本研究の結果は,伝導性静脈のコンプライアンスは,我々の提案した方法によるCSAPv関係から,より生理的に妥当な仮定のもとで評価が可能であることを示唆する.

「デサントスポーツ科学」第26巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 遠藤雅子,三浦朗
大学・機関名 県立広島女子大学

キーワード

伝導性静脈血管コンプライアンス静脈閉塞プレチスモグラフィ法(VCPG法)血管横断面積(CSA)静脈内圧(Pv)