信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 複雑な指運動は本当に脳の活動を促すのか?

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.26 Vol.26

 ポジトロン断層撮像法(PET)を用いて,10名の被験者(20〜30歳)において,異なる指および異なるタッピング方法による運動時に増大する局所脳血流の観点から,複雑な運動でより多くの脳領域が動員されるのかどうかについて調べた.実験では,複雑さの異なる運動課題として,示指,環指の1指による運動と,示指・中指,環指・小指の2指による交互操作運動を用いた.被験者には,2Hzの音刺激に合わせて運動を行うよう指示した.コントロール条件として安静時のデータも収集した.実験収集後に運動の困難さの順位についても報告させた.
 示指および示指・中指の条件に比べて,環指および環指・小指の条件では,より広範な脳領域での高い血流が認められた.また,これらの領域の血流ピーク値は被験者による主観的な困難度と密接に関連していた.1指での運動に比べて2指の場合には,両側の背側運動前野,左側の一次運動・感覚野,右側の小脳により強い賦活が認められた.これらの結果から,複雑な指運動は高次の運動制御・感覚処理に関わる前頭葉,頭頂葉,小脳の活動を促進することが明らかとなった.このような結果は,環指や小指の使用が脳機能維持にとっては極めて重要であることを示唆するものと考えられる.

「デサントスポーツ科学」第26巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 青木朋子*1,津田勇人*2,奥直彦*1,畑澤順*1,木下博*1
大学・機関名 *1 大阪大学大学院,*2 河崎医療技術専門学校

キーワード

ポジトロン断層撮像法(PET)タッピング方法指運動脳機能