信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 効果的負荷トレーニングによる運動能力の向上

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.26 Vol.26

 本研究は,身体に適度な重量負荷が得られるような特殊な生地を用い,素材,形状,動きやすさ等に様々な工夫が施されているスポーツウェア(重量ウェア)の開発を行い,スピード,スタミナ,パワーの要求される硬式野球選手に対する重量ウェア着用によるトレーニングの運動能力および身体組成に及ぼす効果等について検討した.
 T大学硬式野球部に所属する19名の選手を被験者とした.重量ウェアを着用してトレーニングを行う実験群(9名)と,このウェアを着用しない対照群(10名)とに分けた.重量負荷ウェアは,上下で約1.5kgの重量になるように試作し,これをアンダーウェアとして,その上にユニフォームを着用させた.重量負荷トレーニングは,通常の野球練習の中で一日30分間以上は必ず着用する条件で行わせた.実験期間は,6週間とした.対照群は,実験期間中,普通のユニフォームで通常の野球練習を行わせた.
 その結果,重量ウェア着用によるランニング時の心拍数は,普通のユニフォーム時よりも8km/hの速度で毎分約20拍(17%)の増加,12km/hの速度で毎分約13拍(7%)の増加を示した.6週間重量ウェア着用をした実験群の体重は,実施前に比較して,実施後で有意な減少を示した(p<0.01).これに対して,対照群は,6週間の前後で有意な差がみられなかった.実験群では,全身および身体部位別の体脂肪量が有意な減少を示した(全身:p<0.01,脚部:p<0.01,体幹部:p<0.05,腕部p<0.01).全身,身体部位別の筋量,骨量および骨密度については,実験群,対照群のいずれの群でも6週間の前後で有意な差がみられなかった.体力テストにおいて実験群は,握力,全身反応時間,上体おこしの項目で有意な改善がみられた(p<0.01,p<0.05,p<0.05).さらに,実験群では,実施前後で換気性閾値が有意な増加を示した(p<0.01).
 以上,本研究の成績から,通常の野球のスキル向上を目的とした練習中においても,重量ウェアを着用すれば,運動強度水準を高め,運動能力の向上および身体組成の体脂肪の減少にも,効果的にできる可能性が考えられる.したがって,重量ウェアは,実用性から推察すると高い評価ができる.

「デサントスポーツ科学」第26巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 寺尾保,伊藤栄治,堀江繁,齋藤勝
大学・機関名 東海大学

キーワード

重量ウェア野球運動能力重量負荷トレーニング