信州大学 繊維学部技術データベース

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PDF 日常における身体活動が高齢者の動脈硬化度に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.28 Vol.28

 習慣的な身体活動は加齢に伴う動脈伸展性の低下抑制に重要な規定因子であるが,抑制効果を及ぼす動脈部位,効果的な身体活動の量および質については明らかにされていない.本研究では,高齢者における身体活動量および質が部位別動脈硬化度に及ぼす効果について検討した.65歳〜86歳までの高齢者162名(男性71名,女性91名)を対象に,加速度計付体動計を1年間装着し,身体活動量(1日当たりの平均歩数)および質(3METs以上の平均活動時間)を算出した.動脈硬化度の評価にはPWV法を用い,心臓―頸動脈(hc),心臓―大腿動脈(hf),心臓―上腕動脈(hb),大腿動脈―足首(fa)間の脈波速度(pulsewave velocity:PWV)を測定した.その結果,年間平均歩数および3METs以上の平均活動時間はhfPWVとの間に有意な負の相関関係を示した.また,この関係は性,年齢,SBPの影響を除いても顕著であった.さらに,年間平均歩数および3METs以上の平均活動時間を少ないほうから四分位に分けhfPWVを比較すると,身体活動の量・質ともに最も少ないグループのhfPWVのみが他の3グループと比較して有意に高い値を示した.したがって,高齢者における日常の身体活動が動脈硬化抑制に及ぼす部位は,大動脈のような弾性動脈で顕著であり,身体活動の低下は大動脈硬化を進展させるが,一定の身体活動を確保することにより大動脈伸展性が保持され,その身体活動は量・質の両者が重要である可能性が示唆された.

「デサントスポーツ科学」第28巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 柿山哲治*1,青栁幸利*2
大学・機関名 *1 活水女子大学,*2 東京都老人総合研究所

キーワード

身体活動動脈伸展性の低下抑制効果動脈部位高齢者