信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 持久性トレーニングによる運動時換気応答の抑制には中枢性(脳)の適応メカニズムがどの程度関与するのか?

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.28 Vol.28

 背景:先行研究にて,ヒト呼吸化学調節系の特性を制御部(中枢コントローラ)と被制御部(末梢プラント)に分離し定量解析することで,安静時や運動時の換気量決定機構を定量評価する方法論を開発した.本研究は,同法を用いてアスリートの運動時換気抑制機構の詳細を明らかにすることを目的とする.方法:対象は日々持久性運動トレーニングを実施している男性アスリート6名(Tr群)とコントロール群6名(UT群).中枢コントローラの特性(動脈血[呼気終末]CO₂分圧(PETCO₂)→分時換気量(VE)関係)を調べるために,一定濃度のCO₂を吸入させ,VEおよびPETCO₂を測定した.末梢プラントの特性(VE→PETCO₂関係)を調べるために,一定の分時換気を意識的に行わせた.いずれも安静時と低強度運動時の定常状態で測定した.結果:運動時の中枢コントローラ特性(VE=S・(PETCO₂-B))の傾きS値は両群間で差を認めなかったが,X軸切片B値はTr群がUT群よりも高値を示した(p<0.05).運動時の末梢プラント特性(PETCO₂=A/VE+C)のX軸漸近線C値はTr群がUT群よりもやや低値を示した.両サブシステムの交点(動作点)のVE値はTr群がUT群よりも22%有意に低値を示した.両群間の換気反応の差異は中枢コントローラ特性の違いによってほぼ説明できた.結論:アスリートに見られる低強度運動時の換気抑制反応は,長期トレーニングに伴う中枢性(脳)の適応変化が主たるメカニズムであることが明らかとなった.

「デサントスポーツ科学」第28巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 宮本忠吉,山元健太,神谷厚範,高木洋,杉町勝
大学・機関名 国立循環器病センター研究所

キーワード

中枢コントローラ末梢プラント換気量動脈血[呼気終末]CO₂分圧分時換気量低強度運動換気抑制反応