信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF Metabolic Syndromeの背景要因multiple risk factor に及ぼす運動,食事,降圧薬およびそれらの併用療法の影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.28 Vol.28

 メタボリック症候群危険因子の改善には,運動の習慣化,食事および血圧管理など生活習慣の修正が奨められている.しかし,これら個々の介入の功・罪や併用した場合の効果については言及されて来なかった.そこで,本研究ではメタボリック症候群危険因子に及ぼす運動,食事,降圧薬単独療法およびこれらの併用療法の影響について調べた.本研究では,雄性OLETFラット64匹(運動療法群,Ex,n=15;食事療法群,Diet,n=8;運動と食事療法併用群,Ex&Diet,n=8;ACE阻害薬Captopril投与群,Capt,n=9;運動とACE阻害薬併用群,Ex&Capt,n=9;安静対照群,Sed,n=15)を用い,21〜31週齢まで各療法を行い,次のような結果が得られた.1)体重はEx,Diet,Ex&DietおよびEx&Captの4群間に著しい減少が認められ,Sed群に比較し有意な低値であった.体重減少は,皮下脂肪(SFM,r=0.72)に比較し,腸間膜脂肪,副睾丸周囲脂肪および後腹膜脂肪重量を合計した内臓脂肪量(ΣVFM)の減少と極めて関連が高かった(r=0.906).内臓脂肪量の皮下脂肪量に対する相対値(ΣVFM/SFM比)にはExとDiet群間に有意差はなかったが,Ex群のVFM絶対量は有意に低値であった.しかし,骨格筋重量には2群間に差異はなかった.2)血圧(SBP)はCapt,Ex&Captが有意に減少したが,他4群は加齢に伴い上昇した.3)糖負荷試験(OGTT)結果および血清脂質濃度はEx,Diet,Ex&DietおよびEx&Captの4群いずれも有意な改善を示した.Capt単独投与群も僅かに脂質代謝の改善を認めた.4)体組成と血清脂質濃度との関連を調べた結果,VFMが多い程中性脂肪(TG),総コレステロール(TC)濃度が高かったが,VFMが最も多いCapt単独投与群でも血清TGやLDL-コレステロール(LDL-C)濃度は低値であった.
 以上の結果から,とくに運動によってVFMが顕著に減少し,糖・脂質代謝が改善したが降圧しないなど,各療法には長・短が認められた.一方,運動と降圧薬の併用によって,VFMの減少,糖・脂質代謝の改善等メタボリック症候群の危険因子全てが改善した.したがって,メタボリック症候群への対応としては各療法の長・短を認識し,適切な組み合わせによる療法が推奨される.

「デサントスポーツ科学」第28巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 鈴木政登*1,穂積典子*1,大塚淳一*2,進藤大典*3,大野誠*3
大学・機関名 *1 東京慈恵会医科大学,*2 共立薬科大学,*3 日本体育大学

キーワード

メタボリック症候運動食事血圧管理生活習慣降圧薬