信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF スポーツ活動時における脱水の程度が血栓形成に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.28 Vol.28

 von Willebrand factor(VWF)は血栓形成において「分子糊」として作用し,運動時には増加するが,その機序は未だ十分解明されていない.本研究では,夏季の陸上中長距離練習(3時間)に参加した12名を対象にして,スポーツ時の脱水状態がVWF産生に及ぼす影響を検討した.VWF抗原量は,運動開始直前106±8(SEM)%に比し,運動終了直後160±15%,2時間後146±15%と有意に増加した.VWF凝集能(Rcof)も,運動前117±8%に比し,運動直後174±11%,2時間後154±12%と増加した.VWFを分解する酵素(VWF-CPase)活性は,運動直後90.6±3.4%と運動前91.0±3.9%と変化なかったが,2時間後には78.5±6.8%と有意に低下した.これらの結果は,運動後早期には生体内は血栓を形成し易い傾向にあるが,その後にみられるVWF-CPase活性の低下はこの向血栓性を回避するための生体の防御機構が作動した結果と推察される.練習時の発汗量と水分補給量から求めた体重あたりの脱水率には大きな個人差(0.33〜2.61%)が観察された.また,運動直後,2時間後のVWF抗原量およびVWF-CPaseと練習時の体重当たりの脱水率を含めた各種パラメーター(練習時心拍数,最大酸素摂取量)との間には関連はみられなかった.しかし,運動2時間後のVWF凝集能は脱水率と正の相関傾向(p=0.07)にあったことから,脱水が進行した者ほど,VWF凝集能が亢進し向血栓に傾くことが示唆された.

「デサントスポーツ科学」第28巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 石指宏通*1,小倉幸雄*2,井上芳光*3
大学・機関名 *1 奈良県立医科大学,*2 大阪国際大学短期大学部,*3 大阪国際大学

キーワード

von Willebrand factor(VWF)血栓脱水状態運動