信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 伸張性筋収縮による筋損傷が運動学習に与える影響とその神経生理学的要因

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.31 Vol.31

 本研究は,伸張性筋収縮による筋損傷が運動学習に与える影響とその背景にある神経生理学的機序を明らかにすることを目的とした.7名の健常被験者は最大把持力が50%に低下するまで反復的に伸張性運動(ECC)を行った.このECC前およびその約3時間後に,複雑な力制御を繰り返し行う運動学習課題を行った.また,活動時閾値の0.8から2倍の経頭蓋磁気刺激(TMS)を被験者の皮質運動野上に与え,第一背側骨間筋(FDI)から誘発された運動誘発電位(MEP)より,その動員曲線を算出した.運動学習課題終盤における目標と実際に発揮している筋力間の絶対誤差およびFDIの背景筋電図量はECC後でECC前に比して有意に大きかった.また,TMSによるMEPの動員曲線から計算されたMEPの最大値および動員曲線の傾きはECC前に比して,ECC後で有意に大きかった.これらの結果より,伸張性運動後の筋損傷により皮質脊髄路の興奮性が高まり,力発揮中の背景筋電図量の増大と運動学習の阻害を引き起こす可能性が示唆された.

「デサントスポーツ科学」第31巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 遠藤隆志*1,小川哲也*2,中澤公孝*3
大学・機関名 *1 国立障害者リハビリテーションセンター研究所,*2 早稲田大学大学院,*3 東京大学大学院

キーワード

伸張性筋収縮筋損傷伸張性運動(ECC)経頭蓋磁気刺激(TMS)第一背側骨間筋(FDI)運動誘発電位(MEP)遅発性筋肉痛(Delayed onset muscle soreness;DOMS)最大随意筋力(Maximal voluntary contraction ; MVC)