信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 動脈脈波速度の運動負荷応答を利用した血管内皮機能評価法の開発

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.31 Vol.31

 動脈脈波速度(Pulse wave velocity: PWV)は臨床領域で普及している動脈スティフネスの指標であるが,血管平滑筋の制御を受けダイナミックに変化することが明らかにされている.本研究では,低強度運動に対するPWVの応答が血管内皮機能の指標になり得るかどうかを検討した.明らかな心血管径疾患を有さない若年男性6名(21±1歳)および中高年男性10名(69±3歳)を対象に,両下肢PWVを低強度片脚ペダリング運動(20watt,5分間)の前後で測定した.若年者では,運動後,運動脚PWVが有意に低下し(-8.0%),非運動脚PWVに有意な変化は認められなかった(+2.2%).それゆえ,血流変化に伴う血管内皮細胞由来の血管拡張物質の産生増大が関与していると考えられる.一方,中高年者では運動脚,非運動脚ともPWVに有意な変化は認められなかった.これらの結果は,下肢動脈における血管内皮機能の低下を反映しているのかもしれない.以上の結果を踏まえると,運動に伴う下肢PWVの応答を評価する事で血管内皮機能低下の有無を判別することが出来るかもしれない.ただし,若年者のこの応答は持久性運動トレーニング前後で変化しなかったことから,今後,本法の測定精度についての更なる検討が必要と思われる.

「デサントスポーツ科学」第31巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 菅原順
大学・機関名 独立行政法人産業技術総合研究所

キーワード

動脈脈波速度(Pulse wave velocity: PWV)動脈スティフネス血管内皮機能片脚ペダリング運動