信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 競泳選手の着用する水着の形状の違いがパフォーマンス指標に与える影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.31 Vol.31

 本研究ではクロール泳とバタフライ泳における最大推進力,自己推進時抵抗,受動抵抗,およびストロークパフォーマンスを定量化することで,水着の形状の違いがパフォーマンス指標に与える影響について検討した.被験者は自由形を専門種目とする大学競技選手4名と,バタフライおよび個人メドレーを専門種目とする4名の合計8名であった.測定に用いた水着の形状はフルスーツ(LJ),ロングスパッツ(FL),スパッツ(SP),ノーマル(C)の4種類であった.下永田ら(1998)が開発したActive Drag Systemを用いて,水泳中の最大推進力,自己推進時抵抗,受動抵抗を測定した.さらに,水中カメラによって撮影された映像から平均泳速度,ストローク長およびストローク頻度を算出した.
 パフォーマンス指標の違いを明らかにするにあたり,被験者間の競技力の違いを考慮し,水着の性能評価を行なうために,水着の形状ごとに被験者間の各変量に順位をつけ,評価を行なった.
 クロール泳において,最大推進力に14Nの違いが生じていることが明らかとなった.また,自己推進時抵抗においてLJがその他の水着と比較して大きく,受動抵抗においてはLJの優位性が認められた.泳速度においてはCが他の3種類と比較して遅く,ストローク頻度も低かった.バタフライ泳においても水着の違いによって最大推進力に差が認められた.しかしながら自己推進時抵抗においては差が認められず,受動抵抗においてはクロール泳と同様にLJが最も小さい傾向が認められた.泳速度はFLが相対的に速く,FLのストローク頻度は,LJおよびSPに比べ相対的に低いものの,ストローク長がその他の水着と比較して長かった.
 これらの結果から,クロール泳,バタフライ泳のいずれにおいても,水着の形状によって最大推進力,自己推進時抵抗に違いが生じることが明らかとなった.また,競泳水着における形状の違いがストローク長,ストローク頻度などにも影響を与える可能性が示唆された.

「デサントスポーツ科学」第31巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 尾関一将, 田原亮二
大学・機関名 福岡大学

キーワード

ストロークパフォーマンス水着Active Drag System