信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF スプレーによる噴霧が人の感覚や布の熱伝達機構に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.31 Vol.31

 スプレーを布にかけた時の冷却効果について,溶液の蒸発潜熱と衝突噴流による冷却の2つの要因を明確にし,スプレーを衣服内の温度制御に用いる可能性をみつける目的で実験を行った.ジメチルエーテル(DME),水,エタノールの配合量を5段階に変えた2つのシリーズのスプレーを作製し,スプレー量を一定にして布に供した.熱移動は,スプレー直後から2分間の布表面温度と熱流束をそれぞれ赤外線サーモグラフィーとKESサーモラボIIを用いて測定した.
 スプレー直後にどの布に対しても急激な温度低下と熱流束の増加が見られた.この初期の温度低下には,DMEの有無が大きく影響し,DMEを50%含むDME/エタノール/水のスプレーは,DMEを含まないものと比較して,表面温度は3から8℃低くなった.布表面の温度は,その後溶液の蒸発とともに増加する.
 スプレー後40から80秒経た気流が定常状態に近くなった状態で,エタノールと水の配合率と布からの平均蒸発速度(W)の関係をニュートンのクーリングの法則より推定した.その結果,綿編み布ではエタノールの配合率が高くなるにつれてWは大きくなったが,ポリエステル試料では逆の傾向が得られた.すなわち,この時間域の熱移動は,布の含む水分の影響が大きい.また皮膚にスプレーした1分後の溶剤の蒸発と関係が深いこともわかった.

「デサントスポーツ科学」第31巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 鋤柄佐千子*1,田中由佳理*2
大学・機関名 *1 京都工芸繊維大学大学院,*2 武庫川女子大学

キーワード

スプレージメチルエーテル(DME)エタノール熱移動表面温度熱流束れ赤外線サーモグラフィーKESサーモラボIIU