信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 制御工学手法を用いた三次元加速度信号からの酸素摂取量ダイナミクス計測システムの開発

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.32 Vol.32

 中高年齢者の健康管理や肥満防止,心疾患患者への運動処方などを行う上で,身体活動量(エネルギー代謝)を定量的に把握することは重要であり,その無拘束無侵襲計測法の開発が望まれている.エネルギー代謝を推定するために,加速度計を用いた身体活動量の計測が行われているが,基礎代謝の倍数(代謝当量,METs)で表される大まかな定常値しか提供せず,時々刻々と変化する代謝量を推定する手法はこれまでに提案されていない.本研究では,制御工学的手法により三次元加速度の瞬時振幅(A3D)と酸素摂取量(VO₂)間の伝達関数からVO₂ダイナミクスを推定する新しい手法を提案した.被験者10名にトレッドミルを用いてA3DとVO₂間の線形性を調べるための多段階漸増負荷(INC),伝達関数を推定するための疑似ランダム負荷(PRBS)および検証用のステップ負荷(SW)を課した.INCは2.5km/hから6.5km/hまで4分毎に1km/hづつ漸増する負荷であり,PRBSは2.5km/hと5.5km/hの二値系列がランダムに変化する負荷である.SWは2.5km/hから5.5km/hへのステップ状負荷である.INCで計測したA3DとVO₂の定常状態値は2.5km/h〜5.5km/hまで線形性が確認された(r=0.996).PRBSで推定したインパルス応答とステップ負荷で計測したA3DのコンボリューションからVO₂ダイナミクスを予測した.実測値と予測値のRMSEは平均で1.18ml/kg/minであり,良好な推定結果が得られた.また,加速度の瞬時位相から推定した歩行周波数の誤差は1.5%未満であった.本研究で提案する手法は,歩行運動時のエネルギー消費量と歩行リズム周波数の推定ができ,リハビリテーション現場などのガス分析器が使用できない環境などで有用と考えられた.今後,屋外での検証やランニングでの適用性など更なる検討が必要である.

「デサントスポーツ科学」第32巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 新関久一*1,齊藤直*1,内田勝雄*2
大学・機関名 *1 山形大学大学院,*2 山形県立保健医療大学

キーワード

身体活動量エネルギー代謝加速度計酸素摂取量(VO₂)