信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 高気圧酸素療法における腱障害治癒のメカニズムの解明

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.32 Vol.32

 本研究では,高気圧酸素療法によるヒト生体におけるアキレス腱の血液量(THb)および酸素飽和度(StO₂)に対する急性および慢性の影響を検証することを目的とした.赤色分光装置を用いて,高気圧酸素療法による腱の血液循環(THbおよびStO₂)における急性の変化として,気圧および吸引する酸素濃度を変えた3条件(1.3気圧+50%酸素条件,1.3気圧+常酸素条件,常気圧+50%酸素条件)を比較し(実験1),60分間の療法後1〜72時間後までの回復過程の変化(実験2)を測定した.さらに,週2回の頻度で8週間の高気圧酸素療法を施し,腱の血液循環に対する慢性の影響についても検証を加えた(実験3).実験1では,療法終了時(60分)における安静時に対するTHbおよびStO₂の変化率は,3条件間で有意な差は認められなかった.実験2では,高気圧酸素療法終了1時間後および2時間後までは,THbおよびStO₂は安静時よりも高い値を維持していたが,3時間後には安静時レベルまで戻った.実験3では,安静時におけるTHbおよびStO₂が,開始時に比べて6および8週目で有意に低かった.以上の結果,高気圧酸素療法による腱内の血液量および酸素飽和度の増加には気圧および吸入する酸素濃度の両方が影響していること,そして3時間後にはその効果が消失し,8週間にわたって療法を継続すると安静時の血液量および酸素飽和度が減少することが明らかになった.

「デサントスポーツ科学」第32巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 久保啓太郎*1,池袋敏博*2
大学・機関名 *1 東京大学大学院,*2 国士舘大学大学院

キーワード

高気圧酸素療法アキレス腱血液量(THb)酸素飽和度(StO2)