信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 高齢者の認知機能および脳の機能・構造に影響を及ぼす日常的身体活動強度に関する検討

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.33 Vol.33

 要旨

 本研究は,日常的身体活動の強度と認知機能の加齢変化との関係について検討した.平成21年度の地域在住高齢者72名のデータをベースラインとし,同様の対象者について23年度(2年後)の身体活動と認知機能の実態を調査した.ウォーキング以外の運動習慣のない65歳以上の健常高齢者を対象に日常的身体活動について加速度センサー付き体動計を用い3ヶ月以上に渡る客観的かつ詳細な調査を行った.また,認知機能評価ではTask-Switch反応時間課題(TS課題)を用い,これを機能的磁気共鳴映像法(fMRI)による脳画像解析と組み合わせることによって認知神経科学的妥当性を持った検討を実施した.TS課題による認知パフォーマンスについて2年間の縦断的検討を実施した結果,軽度身体活動(<3METs)時間の長い高齢者ほど認知パフォーマンスの正答率が保持されており加齢低下が少ない関係にあることが確認された.一方,中程度(>4METs)以上の身体活動が長い高齢者ほど認知処理速度が保持されており加齢低下が少ないことが確認された.さらにfMRIの検討では,中等度身体活動時間の短い群において,追跡調査時点にベースライン時点よりも強い補完的賦活が側頭葉領域で認められた.中等度身体活動の習慣化が脳神経系を取り巻く環境を良好に保ち,認知課題の処理速度の保持に有効に働きかけることが示唆された.

「デサントスポーツ科学」第33巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 木村憲*1,安永明智*2
大学・機関名 *1 東京電機大学,*2 文化学園大学

キーワード

日常的身体活動認知機能加速度センサーTask-Switch反応時間課題(TS課題)機能的磁気共鳴映像法(fMRI)軽度身体活動(<3METs)中程度身体活動度(>4METs)