信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 持久性運動トレーニングが脳血流動態及び脳循環調節機能に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.33 Vol.33

 要旨

 持久性競技アスリート選手は,起立耐性が低下することが報告されている.一方,脳循環調節機能が起立耐性を決定する生理因子と考えられるが,持久性トレーニングが脳循環調節機能に与える影響については明らかにされていない.そこで本研究では,脳自己調節機能が持久性トレーニングにより低下すると仮説を立て,持久性アスリートと非アスリートとの比較実験によりこの仮説を検証した.定期的に運動を行っていない(週2日以下)体力レベルが中等度(AF;最大酸素摂取量40ml/min/kg)の健常男性8名(非鍛錬群)及び2年以上,週5〜6日の持久運動トレーニングを行っているアスリート(HF;64ml/min/kg 以上)男性8名(鍛錬群)を対象に実験を行った.動的な脳自己調節機能の同定は,先行研究と同様の方法を用いた.被検者は,座位姿勢において,カフ止血リリース法による動脈血圧低下時の中大脳動脈血流速度(経頭蓋ドップラー計測装置;TCD法)の反応から脳自己調節機能の指標である RoR(rate of regulation)を算出評価した.RoRは,両群間で有意な差は観察されなかった(AF, 0.096±0.107/s; HF, 0.088±0.075/s: P=0.878).この結果は,我々の仮説とは異なり,動的な脳循環調節機能が,持久性トレーニングによる起立耐性の低下に関与する可能性が低いことを示唆した.

「デサントスポーツ科学」第33巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 小河繁彦
大学・機関名 東洋大学

キーワード

起立耐性脳循環調節機能持久性トレーニング脳循環調節機能経頭蓋ドップラー計測RoR(rate of regulation)