立位中の転倒恐怖心が下肢筋脊髄興奮性に与える影響の解明
【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.46 Vol.46】
要旨
様々な動作の基本であり生活に必要不可欠な立位姿勢は,諸要因によってそのバランスの低下,ひいては転倒リスクの増大をもたらす.これらの要因の一つに,転倒に対する恐怖心が挙げられる.また,下肢筋の活動は立位バランスの維持に重要であり,筋活動は脊髄運動ニューロン(脊髄MN) が興奮することで生じる.よって,本研究の目的は,立位中の転倒恐怖心が下肢筋の脊髄MN興奮性に与える影響を解明することとした.11 名の成人男性が実験に参加し,仮想空間に誘導するヘッドマウントディスプレイを着用して静止立位課題を90 秒間行った.課題は惹起される転倒恐怖心のレベルが異なる3つの条件下でそれぞれ行われた(Low-threat条件,Medium-threat条件,High-threat条件).各条件にて,被験者は腰部への経皮的脊髄電気刺激(transcutaneous spinalcord stimulation: tSCS)を計15回受けた.その際,外側広筋,大腿二頭筋長頭,前脛骨筋,ヒラメ筋,腓腹筋内側頭,および腓腹筋外側頭から得られる筋応答を脊髄反射として記録した.結果として,High-threat条件にてLow-threat条件と比較して前脛骨筋の脊髄反射振幅が有意に増大した.一方で,他の筋の脊髄反射振幅については,条件間で有意差が確認されなかった.以上より,立位中の転倒恐怖心は前脛骨筋の脊髄MN興奮性を促通させることが明らかとなった.
「デサントスポーツ科学」 第46巻/公益財団法人石本記念デサントスポーツ科学振興財団
様々な動作の基本であり生活に必要不可欠な立位姿勢は,諸要因によってそのバランスの低下,ひいては転倒リスクの増大をもたらす.これらの要因の一つに,転倒に対する恐怖心が挙げられる.また,下肢筋の活動は立位バランスの維持に重要であり,筋活動は脊髄運動ニューロン(脊髄MN) が興奮することで生じる.よって,本研究の目的は,立位中の転倒恐怖心が下肢筋の脊髄MN興奮性に与える影響を解明することとした.11 名の成人男性が実験に参加し,仮想空間に誘導するヘッドマウントディスプレイを着用して静止立位課題を90 秒間行った.課題は惹起される転倒恐怖心のレベルが異なる3つの条件下でそれぞれ行われた(Low-threat条件,Medium-threat条件,High-threat条件).各条件にて,被験者は腰部への経皮的脊髄電気刺激(transcutaneous spinalcord stimulation: tSCS)を計15回受けた.その際,外側広筋,大腿二頭筋長頭,前脛骨筋,ヒラメ筋,腓腹筋内側頭,および腓腹筋外側頭から得られる筋応答を脊髄反射として記録した.結果として,High-threat条件にてLow-threat条件と比較して前脛骨筋の脊髄反射振幅が有意に増大した.一方で,他の筋の脊髄反射振幅については,条件間で有意差が確認されなかった.以上より,立位中の転倒恐怖心は前脛骨筋の脊髄MN興奮性を促通させることが明らかとなった.
「デサントスポーツ科学」 第46巻/公益財団法人石本記念デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 | 高橋涼吾*1, 金子直嗣*1, 石川慶一*1, 佐藤和之*2, 益城優芽*1 |
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大学・機関名 | *1 東京大学, *2 フリードリヒ・シラー大学イエーナ |
キーワード