若年期の運動不足が成年期以降の認知機能低下をもたらすエピジェネティック機構の解明
【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.46 Vol.46】
要旨
本研究の目的は,若年期の運動不足が海馬におけるDNAメチル化状態に変化を及ぼし,成年期の認知機能低下を招くかどうかを検証することであった.ラットを4週齢時に,通常飼育(CON)群と床面積が通常の半分程度の狭いケージで飼育することで活動制限を行う(IN) 群に分け,12週齢まで飼育した.12週齢以降は活動制限を解除し,20 週齢に至るまで両群通常サイズのケージで飼育を行い,物体位置認識試験を実施した.IN群での物体位置認識試験の成績不良とともに,海馬においてミエリン化に関わる遺伝子とタンパク質の発現が増大した.一方,これらの遺伝子発現は,若年期の運動不足によって誘発されたDNAメチル化が成年期まで保持されたものではなく,成年期にのみ観察されるDNA低メチル化と関連していた.若年期の運動不足は遅発的なDNAの低メチル化とそれに連動したミエリン化関連遺伝子の発現調節障害とともに将来の認知機能低下を招く可能性が示唆された.
「デサントスポーツ科学」 第46巻/公益財団法人石本記念デサントスポーツ科学振興財団
本研究の目的は,若年期の運動不足が海馬におけるDNAメチル化状態に変化を及ぼし,成年期の認知機能低下を招くかどうかを検証することであった.ラットを4週齢時に,通常飼育(CON)群と床面積が通常の半分程度の狭いケージで飼育することで活動制限を行う(IN) 群に分け,12週齢まで飼育した.12週齢以降は活動制限を解除し,20 週齢に至るまで両群通常サイズのケージで飼育を行い,物体位置認識試験を実施した.IN群での物体位置認識試験の成績不良とともに,海馬においてミエリン化に関わる遺伝子とタンパク質の発現が増大した.一方,これらの遺伝子発現は,若年期の運動不足によって誘発されたDNAメチル化が成年期まで保持されたものではなく,成年期にのみ観察されるDNA低メチル化と関連していた.若年期の運動不足は遅発的なDNAの低メチル化とそれに連動したミエリン化関連遺伝子の発現調節障害とともに将来の認知機能低下を招く可能性が示唆された.
「デサントスポーツ科学」 第46巻/公益財団法人石本記念デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 | 土橋祥平*1, 松井 崇*1, 吉原利典*2 |
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大学・機関名 | *1 筑波大学, *2 順天堂大学 |
キーワード