坂ダッシュトレーニングによる下肢筋活動への影響
【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.44 Vol.44】
要旨
本研究は,上り坂走と平地走における下肢筋活動の相違について解明することを目的とした.被験者は大学陸上競技部の男女12名(男子7名,女子5 名)であった.平地および上り坂で60mを全力疾走した際の走動作と下肢筋(前脛骨筋,腓腹筋外側頭,大腿直筋,両脚の大腿二頭筋)の筋電図を取得した.解析区間(40-60m)における時空間的変数,筋活動のタイミング,筋活動量を定量し条件間で比較した.その結果,上り坂走では走速度,ピッチ,ストライドが有意に減少した.筋活動量はいずれも条件間で有意差が認められなかった.一方,上り坂走では,大腿直筋の筋活動のタイミングがランニングサイクルの後半に有意にシフトした.これは上り坂走において,スウィング脚のリカバリー動作(股関節屈曲)のタイミングに遅延が生じ,ピッチの低下に繋がっていたと推察される.以上より,坂ダッシュトレーニングは,筋活動量でなく筋活動のタイミングに影響を及ぼす可能性が示された.
「デサントスポーツ科学」 第44巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
本研究は,上り坂走と平地走における下肢筋活動の相違について解明することを目的とした.被験者は大学陸上競技部の男女12名(男子7名,女子5 名)であった.平地および上り坂で60mを全力疾走した際の走動作と下肢筋(前脛骨筋,腓腹筋外側頭,大腿直筋,両脚の大腿二頭筋)の筋電図を取得した.解析区間(40-60m)における時空間的変数,筋活動のタイミング,筋活動量を定量し条件間で比較した.その結果,上り坂走では走速度,ピッチ,ストライドが有意に減少した.筋活動量はいずれも条件間で有意差が認められなかった.一方,上り坂走では,大腿直筋の筋活動のタイミングがランニングサイクルの後半に有意にシフトした.これは上り坂走において,スウィング脚のリカバリー動作(股関節屈曲)のタイミングに遅延が生じ,ピッチの低下に繋がっていたと推察される.以上より,坂ダッシュトレーニングは,筋活動量でなく筋活動のタイミングに影響を及ぼす可能性が示された.
「デサントスポーツ科学」 第44巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 | 欠畑岳*1, 後藤悠太*2, 礒繁雄*3, 彼末一之*4 |
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大学・機関名 | *1東京大学・早稲田大学, *2 立命館大学, *3 早稲田大学, *4 順天堂大学・早稲田大学 |
キーワード