暑熱環境下における皮質脊髄路の興奮性の検討
【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.42 Vol.42】
要旨
本研究では,暑熱負荷に伴う皮質脊髄路の興奮性を評価するために,経頭蓋磁気刺激法(Transcranial Magnetic Stimulation: TMS) を用いて検討することを目的とした.健康な一般成人男性10 名を対象とし,水循環服を用いて受動的に体温を上昇させた.経頭蓋磁気刺激は左脳半球の一次運動野をターゲットとし,右手の第一背側骨間筋に電極を貼付し,運動誘発電位(Motorevokedpotential: MEP) を計測した.運動誘発電位を記録するタイミングとして,① Pre (暑熱負荷前),②Warm (食道温が0.5℃上昇した時点),③ Heat (食道温が1.2℃上昇した時点),および④Recovery(暑熱負荷終了後30分時点) の4つのセッションを設定した.また,各セッションで経頭蓋磁気刺激の安静時運動閾値を計測し,その100%,110%,120%,130%の4 段階の刺激強度を用い,皮質脊髄路の興奮性の変動を検討した.実験の結果,運動誘発電位の振幅は,低強度刺激(100%,110%) 時にはセッション間で有意差は認められなかったが,高強度刺激 120%,130%) 時では暑熱負荷時に有意な振幅の低下が認められた.暑熱負荷中においては,運動ニューロンが多く動員されるような高強度の筋収縮時の方が,低強度の筋収縮よりも影響を受けやすいと考えられた.また,運動誘発電位の潜時について,磁気刺激の強度に関わらず,暑熱負荷時に短くなった.このことから,脳からの下行性(遠心性) の神経伝導は深部体温・表面皮膚温の上昇ともに,速まることが示された.以上の結果から,暑熱環境下では皮質脊髄路の興奮性は影響を受けることが示唆された.
「デサントスポーツ科学」 第42巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
本研究では,暑熱負荷に伴う皮質脊髄路の興奮性を評価するために,経頭蓋磁気刺激法(Transcranial Magnetic Stimulation: TMS) を用いて検討することを目的とした.健康な一般成人男性10 名を対象とし,水循環服を用いて受動的に体温を上昇させた.経頭蓋磁気刺激は左脳半球の一次運動野をターゲットとし,右手の第一背側骨間筋に電極を貼付し,運動誘発電位(Motorevokedpotential: MEP) を計測した.運動誘発電位を記録するタイミングとして,① Pre (暑熱負荷前),②Warm (食道温が0.5℃上昇した時点),③ Heat (食道温が1.2℃上昇した時点),および④Recovery(暑熱負荷終了後30分時点) の4つのセッションを設定した.また,各セッションで経頭蓋磁気刺激の安静時運動閾値を計測し,その100%,110%,120%,130%の4 段階の刺激強度を用い,皮質脊髄路の興奮性の変動を検討した.実験の結果,運動誘発電位の振幅は,低強度刺激(100%,110%) 時にはセッション間で有意差は認められなかったが,高強度刺激 120%,130%) 時では暑熱負荷時に有意な振幅の低下が認められた.暑熱負荷中においては,運動ニューロンが多く動員されるような高強度の筋収縮時の方が,低強度の筋収縮よりも影響を受けやすいと考えられた.また,運動誘発電位の潜時について,磁気刺激の強度に関わらず,暑熱負荷時に短くなった.このことから,脳からの下行性(遠心性) の神経伝導は深部体温・表面皮膚温の上昇ともに,速まることが示された.以上の結果から,暑熱環境下では皮質脊髄路の興奮性は影響を受けることが示唆された.
「デサントスポーツ科学」 第42巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 | 中田大貴, 芝﨑学 |
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大学・機関名 | 奈良女子大学 |
キーワード