信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 体性感覚野における上肢と下肢の神経学的結合性の検証 ―四肢の協調運動能力への神経生理学的アシストを目指して―

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.42 Vol.42

 要旨

 ヒトの上-下肢間協調の神経基盤として,上肢筋の収縮により下肢筋の脊髄反射路や皮質脊髄路の興奮性が増大することは知られているものの,下肢筋の体性感覚野の興奮性に与える影響に関しては未だ明らかでない.体性感覚野の興奮性は,末梢電気刺激後に脳波(EEG) 上で記録される体性感覚誘発電位(SEP) を用いて調べられてきた.本研究では,上肢筋の随意収縮時と,神経筋電気刺激(NMES) による不随意な収縮時に,下肢の脛骨神経へ体性感覚刺激を与えることで惹起されるSEPの変調について検証した.健常成人男性12 名を対象に,安静,随意的な手関節の屈曲,NMESによる手関節屈曲の3条件時に,右膝裏から脛骨神経を刺激することでSEPを計測した.手関節の屈曲はいずれも最大随意収縮の10 %の力であり,NMESは右腕の正中神経に対して用いられた.結果として3条件間にSEPの振幅(N40,P50, N70) の有意な差は認められなかった.すなわち,本研究の設定では,上肢筋の随意収縮とNMESによる不随意な収縮のいずれも,下肢の体性感覚野の興奮性に影響を与えないことが示唆された.

 「デサントスポーツ科学」 第42巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 加藤辰弥*1, 金子直嗣*1, 横山光*2
大学・機関名 *1 東京大学, *2 東京農工大・東京大学

キーワード

上下肢間体性感覚誘発電位神経筋電気刺激脳波随意収縮