スピントラップ法によるポリウレタン素材の熱機械劣化反応機構に関する研究
【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.41 Vol.41】
要旨
一般に高分子材料は,熱や光,酸素,応力などの要因によって,ラジカル種を経由して劣化が起こるとされている.しかし,実際の条件下で反応中間体のラジカル種が観測された例はこれまでほとんどなく,提案されている反応式の多くは,反応後の生成物の解析結果から帰納的に求められたものである.そこで本研究は,スピントラップ法によりラジカル種の寿命を長くすることで,ラジカル種を解析できる電子スピン共鳴 (ESR) による測定を可能とし,飽和炭化水素系ポリウレタンの熱機械劣化の途中で生成する短寿命ラジカル種の観測を試みた.結果として,振動型粉砕器により粉砕したポリウレタンからはラジカル種を観測することはできなかったが,試料を加熱すると,140 ℃~180 ℃において,ウレタン結合のO-CONH部位における均等開裂によって生じる ・OCH2-ラジカルおよび・CONH-ラジカル,ならびに,水素引抜で生じる主鎖-・CH-ラジカルおよびそのβ切断によって生成する・CH2-ラジカルに由来する計5種のスピンアダクトを観測することに成功した.我々は,ポリウレタンにおいて,これまで知られていなかったラジカル的な反応経路で熱劣化が起こることを明らかにし,スピントラップ法による高分子材料の劣化反応解析における有用性を示した.
「デサントスポーツ科学」 第41巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
一般に高分子材料は,熱や光,酸素,応力などの要因によって,ラジカル種を経由して劣化が起こるとされている.しかし,実際の条件下で反応中間体のラジカル種が観測された例はこれまでほとんどなく,提案されている反応式の多くは,反応後の生成物の解析結果から帰納的に求められたものである.そこで本研究は,スピントラップ法によりラジカル種の寿命を長くすることで,ラジカル種を解析できる電子スピン共鳴 (ESR) による測定を可能とし,飽和炭化水素系ポリウレタンの熱機械劣化の途中で生成する短寿命ラジカル種の観測を試みた.結果として,振動型粉砕器により粉砕したポリウレタンからはラジカル種を観測することはできなかったが,試料を加熱すると,140 ℃~180 ℃において,ウレタン結合のO-CONH部位における均等開裂によって生じる ・OCH2-ラジカルおよび・CONH-ラジカル,ならびに,水素引抜で生じる主鎖-・CH-ラジカルおよびそのβ切断によって生成する・CH2-ラジカルに由来する計5種のスピンアダクトを観測することに成功した.我々は,ポリウレタンにおいて,これまで知られていなかったラジカル的な反応経路で熱劣化が起こることを明らかにし,スピントラップ法による高分子材料の劣化反応解析における有用性を示した.
「デサントスポーツ科学」 第41巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 | 坂井亙 |
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大学・機関名 | 京都工芸繊維大学 |
キーワード