信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 幼少期における筋出力調節能力の発達過程に関する研究

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.41 Vol.41

 要旨

 本研究では,握力による出力調節課題を用いて,随意的な出力増加および減少時における調節特性について,幼少期の発達過程に着目し検討することを目的とした.児童後期である小学5年生の男子26名,女子25名を対象とし,立位姿勢で利き手による握力発揮を課題動作とした.最大努力で力発揮 (0%から100%へ) する「最大握力課題」,最大努力に対する半分 (50%) の力へ調節 (0%から50%へ) する「半分増加課題」,最大努力で力発揮をした状態から半分の力へ調節 (100%から50%へ) する「半分減少課題」を各2試技ずつ行った.発揮された張力を記録し,各課題2試行の平均値,半分増加および半分減少課題については,最大握力課題に対する相対値を算出し,目標値(50%) との誤差 (恒常誤差,絶対誤差) から正確性を評価した.その結果,最大握力課題の平均値と半分増加および半分減少の恒常誤差との関係性については,男女ともに有意な関係性は認められなかった.半分増加および半分減少課題の相対値については,半分減少課題が半分増加課題よりも,また女子が男子よりも有意に小さかった.恒常誤差については,半分減少課題が半分増加課題よりもまた女子が男子よりも,マイナス方向に有意に大きかった.さらに男子のみ半分増加と半分減少の相対値について有意な正の相関がみられた.これらの結果から,幼少期における筋出力調節能力において,最大努力による握力発揮能力と目標値への出力調節能力には関係性は認められず,自らの最大努力による力発揮能力と,狙ったように自らの身体をコントロールする力である調整力は,異なる能力を示す可能性が示唆された.また,男女ともに減少させる調節は増加させる調節よりも正確性は低いが,児童期における男子は女子よりも調整力が高いことが示された.

 「デサントスポーツ科学」 第41巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 大高千明,中田大貴,藤原素子
大学・機関名 奈良女子大学

キーワード

グレーディング能力力の抜き調整力幼少期発達過程