信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 寒冷環境を活かした低負荷での運動効果 - 筋量増加に働くマイオカインに着目して-

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.40 Vol.40

 要旨

健康寿命の延伸を図るうえで,骨格筋量を維持することは重要である.近年では骨格筋収縮により血中に放出される「マイオカイン」が筋量維持の一端を担っていることが報告されている.マイオカインは多くの場合,高負荷や長時間の運動での応答が確認されている.本研究では,こうした運動が遂行困難な者でも,寒冷環境を利用することで低負荷での運動により筋量の維持に重要なマイオカイン分泌を合理的に促すことができるか否かを検証した.対象は,健康な成人男性6名( 20-30 歳) とし2 回の異なる温度環境条件下での運動試技( 通常温: 24℃,低温: 15-19℃) を実施した.各温度環境下での運動は,40 分間の安静後に最大酸素摂取量の60%の運動強度で1 時間のペダリングとした.採血は運動前後において6 回にわたり経時的( 運動前,運動30分後,運動直後,運動終了1,2,3 時間後) に行った.その結果,予想に反し寒冷環境下において筋量の維持に重要な運動誘発性のマイオカインであるIrisin およびFGF21 は,通常温度環境下でのそれらと有意な違いを示さなかった.その一方で,有酸素運動においてFGF21 と逆の応答を示すinsulin は,寒冷環境下での運動により減少が抑制されていた. 以上のことから,15-19℃程度の寒冷環境下での運動は筋量維持に重要なマイオカインは,通常温度環境下での応答と差異がないことが示唆された.

 「デサントスポーツ科学」 第40巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 土屋吉史
大学・機関名 長崎大学

キーワード

運動温度マイオカインイリシン線維芽細胞増殖因子21