信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 暑熱環境下の運動による脱水がヒト脳認知機能に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.40 Vol.40

 要旨

 本研究では脳波事象関連電位を用い,暑熱環境 下で自転車エルゴメータによる有酸素運動を行 い,脱水・飲水が運動遂行過程・運動抑制過程に 関わる認知機能に及ぼす影響を明らかにすること を目的とした.実験には 15 名の成人男性被験者 が参加した.脱水条件および飲水条件において, 体性感覚刺激 Go/No-go 課題を行い,自転車エル ゴメータによる運動前(Pre),15 分間 ×4 セッ トの運動セッション後(Post),1 時間の冷却後(Recovery)に事象関連電位を計測した.生理指 標・血液データとして,食道温,平均皮膚温,心 拍数,平均血圧,血漿浸透圧,ヘマトクリット値, ヘモグロビン濃度を解析対象とした.実験の結果, 行動指標の反応時間に関し,脱水条件・飲水条件 ともに Pre よりも Post の方が有意に短くなった. 体性感覚認知処理過程を反映する N140 成分の振 幅 は,脱水条件では Pre よりも Post,Recovery において振幅が有意に低下したが,飲水条件ではそのような差は認められなかった.高次認知 機能に関与する P300 成分の振幅は,脱水条件な らびに飲水条件においても,条件やセッション の主効果・交互作用が認められず,Pre,Post, Recovery 間でも振幅に有意差は認められなかっ た.これらの結果から,飲水の効果は体性感覚認 知処理過程に関わる神経活動に見られ,反応時間 などで示される反応実行系や,P300 成分として 反映される認知処理系には関与しない可能性が示唆された.

 「デサントスポーツ科学」 第40巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 中田大貴*1,上條義一郎*2,伊藤倫之*3,大高千明*1,芝﨑学*1
大学・機関名 *1奈良女子大学, *2和歌山県立医科大学, *3京都府立医科大学大学院

キーワード

事象関連電位P300暑熱Go/No-go運動