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全研究総覧

姨捨棚田の水源域における水文構造-大池湧水ならびに姨捨棚田水路における流量観測- 【地域】 千曲市 姨捨棚田

はじめに

姨捨棚田の水源は、その上流に位置する大池の湧水である。大池湧水の集水域には森林が存在しており、水を通して「森林‐湧水‐棚田」という関係が成立している。
本研究では、大池湧水と姨捨棚田への用水路において流量観測を行い、「森林‐湧水‐棚田」の関連をまず量的な面から考察する。さらに、大池湧水の集水域の土地条件(森林面積率、土地利用情況等)を精査し、湧水の流量変動との関連性を把握する。
以上をもとに、姨捨棚田の水源域における水文構造を明らかにし、この地域における水利用状況の問題点を把握し、今後の水源管理方法について考察を行う。

結果と考察

2010年8月に大池湧水における流量観測のための水位計を設置した。また、9月から八幡地籍の姨捨棚田への用水路(以下、姨捨水路とする)に水位計を設置した。大池湧水では、湧水直下に設置されていたパーシャルフリュームを使用し、静電容量型水位計を設置して水位と水温の観測を行う体制を整えた。姨捨水路においては長方形水路に静電容量型水位計を設置して水位等の観測体制を整えた。さらにその直下において水深と流速を測定して流量を求め、水位-流量のキャリブレーションを行なっている。また、両観測点においてデータ回収時に電気伝導度の測定を行っている。なお降雨データについては気象庁聖高原観測所のデータを用いて降雨‐流出の応答関係の解析を行うが、必要に応じて雨量計の設置についても検討する。
図‐1に大池湧水における水位観測結果を、図‐2に姨捨水路における水位観測結を示す。両者とも10分ごとの観測値である。大池湧水では、流量に明瞭な日周期変動が見られた一方で降雨に対する応答は鈍かった。姨捨用水路では、降雨に対する応答が認められたが、無降雨期間でも水位の微変動が激しく、今後データの取り扱い方法について検討が必要である。
電気伝導度は大池湧水で120μs/cm程度、姨捨水路で140μs/cm程度であった。大池湧水については山地帯の湧水としてはやや高い値であり、今後、水質分析などを行う必要があると考えられる。


図‐1 大池湧水における流量観測結果(2010年11月21日~12月19日)


図‐2 姨捨用水における水位観測結果(2010年11月21日~12月19日)

今後の方針と計画

本研究は内川義行教員による「姨捨棚田の水源・大池流域における水文構造と実態の把握」の一部に位置付けられる。
今後も内川教員と連携しつつ、研究を進めていく予定である。また、生態分野に関しても、流量・水温のデータを提供するなどして連携を深め、とくに水質の問題については十分に議論を行いながら研究を進めて行きたい。

研究者プロフィール

小野 裕
教員氏名 小野 裕
所属分野 農学部 森林科学科 山地環境保全学
所属学会 日本林学会、砂防学会、水文・水資源学会、森林立地学会
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