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平成26年度 文化庁 大学を活用した文化芸術推進事業・信州大学「共時と創発」

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基礎講座[結果報告]

第6回・基礎講座(第2部:国際事業の文化芸術マネジメント)

スキル
専門知識・技能
講座内容
インドネシア×日本 国際共同制作企画ダンスオペラ「Gandahri」
(ワーク・イン・プログレス/アフタートークセッション終了]
講師
北村明子准教授(人文学部)、Tony Prabowo (作曲家/Komunitas Salihara 芸術監督)、
Yudi Ahmad Tajudin (演出家/俳優/Teater Garasi 芸術監督)
開催会場
茅野市民館・マルチホール
開催日時
2014年7月21日(月)

「共時と創発」基礎講座第6回目は、ダンスオペラの創作プロセスを劇場発表形式にて実演公開するワーク・イン・プログレスのアフタートークセッションを行い、ダンスオペラの構想や国際共同制作の舞台裏と国際的なアートマネジメントについてご紹介します。
 

レクチャー内容「インドネシア×日本 国際共同制作企画ダンスオペラ「Gandahri」アフタートーク

北村 国際共同企画は、アーティストの個々の出会いに始まり、アイディアや企画が生まれます。今回のダンスオペラでもマハーバラタについての調査から始まり、茅野地域との結びつきをふまえてワーク・イン・プログレスを実施しました。

Q.マハーバラタに着眼したのはどのような経緯からですか?
トニー インドネシアにおいてマハーバラタが取り上げられることはあまりありません。しかし私にとってガンダリという女性は、脚本、作曲という観点でとても興味深いキャラクターでした。ガンダリは盲目の夫とシンパシーを得るために自らも目を閉じたというのが一般的な物語ですが、グナワモハンマドが書いた物語では、夫に対する共感からだけでなく、マハーバラタ大戦争において子供たちを全て失い、世界が破壊されたことへの失望によって目を閉じたとある。ガンダリは世界を汚れたもの、闇の深いもの痛みをともなうものと理解している。私自身、ガンダリを現在の世界のひとつの象徴として捉えている。
ユディ マハーバラタは大きな物語であり、インドからインドネシアにもたらされ、その後ジャワ島の文化と融合しジャワオリジナルのマハーバラタができている。グナワン・モハメドと私達の解釈は、男性によって支配されている神々の社会に抵抗する女性です。抵抗する女性の他にも、暗くなった世界にも抵抗していることを表しています。個人的には、見ることではなくもっと耳を傾けることを現代社会へ問いたいと考えています。そういったことを伝統的な話から現代に引き戻して考えることをテーマとしています。

Q. このような大きな世界観にあるダンスオペラのワーク・イン・プログレスの課題をもったなかで、インドネシアと茅野をつなぐ創作プロセスをどのように進めたのですか?
山田 ガンダリが男性か女性かもわからない状況から始まりました。茅野とマハーバラタとガンダリを繋げるために、より広く叙事詩として残していく。歴史とは、どういう風に誰の力で残されていくのか考えたいと思いました。茅野に来て諏訪大社の前宮など地域を色々と見て周りました。狩猟採取などの文化性に古事記の神話世界と全く別の時空があることに興味をもち、1神教ではなく自然崇拝が色濃いことにショックを受けました。そこから、一人ひとりにキャラクターをつくって、身体をつかって物語をつくることを通して物語を実現していくことに試みました。ガンダリという隔たっていた物語の人物と茅野の女の子を重ねることで、目を閉じることがどういうことかを表現しました。

Q. このワーク・イン・プログレスを見ての印象は?
ユディ ワーク・イン・プログレスのメンバーの一人として印象深かったです。茅野バーションのガンダリとして完成に近かったと思います。トニーも同じ感想をもっています。
辻野館長 写実的で抽象的なものと出会った気がしました。見えないありえないものの先に何か見つけないといけないなと思いました。当館が信州大学と連携主催した意図として、大学を活用した事業に成立しているが、ものを作っていくプロセスに出会うことはなかなか出来ない現状にあります。製作過程に参加して1週間多くの地場が形を変えながら飛び交っていることを共有できたことにとても感謝したいと思います。会場の皆さまにも磁場が重なって様々な層が出来上がって呼吸ができていくことを体験してほしいと思います。
北村 今回、諏訪に身を置いてリサーチして戻ってくると、どんどんアイディアが変わっていきます。そのことが嬉しく感じ、ワクワクする気持ちでプロダクションしていました。振付は2日前までどんどん変わっており、本日初めてみる場面もありました。クリエーションはアイディアに周りが呼応するように進んでいったと思います。

Q.トニー氏はジャカルタでインドネシアを代表する作曲家である一方、サリハラ劇場で演劇と地域のコミュニティを紹介することもキュレーションしています。実験的な取組みを紹介するときにどういう進め方をしていますか?
トニー サリハラ劇場は2008年に設立された新しい劇場です。ギャラリー、劇場、ホールなどがある複合施設です。そこでは新しい作品や実験的な作品を扱うことを理念にしています。2008年のオープニングには北村明子さんも招待しました。毎月のレギュラー公演の他、年1回の国際フェスティバルを実施しています。今後は、ヨーロッパなど国内外にコネクションをつくり、海外のアーティストの表現の場にしていきたいと思っています。
受講生・会場参加者 ダンサーの身体の時間はどこにいたのか?現代の部分など、時間が進むにつれて、どう変化していったか?
北村 ガンダリは絶望的な話であり、当初はダンサーがガンダリとして動くことも考えていました。今回は音楽とダンサーのボキャブラリを抽出することにフォーカスしました。まだガンダリの物語にアクセスしていません。私はダンスが言葉で説明される領域を避けたいと思っています。音楽の拍やダイナミクスをつかんで表現していくアブストラクトの段階で、精神状態にアクセスしています。絶望的な世界観のキーワードにヒントをもらい抽出しました。視野を自ら失うということとダンスの動きの関連をどのように考えていけるかが今後のテーマになっています。まだまだシーンごとのコラージュの段階で、24シーンの組換えをしている状況です。

北村 今回のダンスオペラでは、物語を理解するということではなくそれぞれのアーティストの解釈を表現しており、アーティストのクリエーションのよりどこをつくったと思っています。是非、インドネシアの本公演にて結果をみてほしいと思います。また、文化の違いも楽しみながら茅野までたどり着いたことも解っていただければと思います。

参加者からは、
「アフタートークまで聴き、創作の熱を感じました。ワーク・イン・プログレスだからこそ、それぞれの作家さん、ダンサーさんのアイディアの探求を感じられたように思います。「語られない歴史もある」というくだり、「受け入れることと思考停止は違う」というセリフにドキッとしました。強く心に残っています。」
「初めてのワーク・イン・プログレスでしたがトークの中でのはちゃめちゃ?な当日のアドリブ、そんなことがあったとはつゆとも知らず、ふむふむと鑑賞してしまいました。こんなにも実験的なものか…と感じました。」
「身体と伝承、過去と現在が入り混じり、自分が一体いつどこにいるのか、まるで物語の世界に迷い込んでしまったようだと感じました。また身体パフォーマーと語り手である役者の皆さんがそれぞれの能力を最大まで引き出している印象を受けました。」
などの感想をいただきました。

ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

レクチャーの様子