信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 呼吸筋トレーニングが運動パフォーマンスを向上させるメカニズムの解明〜近赤外線分光法を用いた検証〜

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.37 Vol.37

 要旨

 これまでの研究において,呼吸筋トレーニングが長時間高強度運動のパフォーマンスを向上させることは報告されてきたが,そのメカニズムについては未だ明らかになっていない.我々は,そのメカニズムについての洞察を得るために,近赤外線分光法(NIRS)を用いて,高強度自転車運動中の呼吸筋および下肢骨格筋における酸素動態を6週間の吸気筋トレーニング前後で同時にモニタリングした.16名の健康な若年男性が,これまでに効果が認められている負荷で実施する群(inspiratory muscle training : IMT)と効果が得られないとされる負荷で実施する群(SHAM群)のいずれかに分けられ,週5日以上,6週間に渡って吸気筋トレーニングを実施した.被験者らは,90%VO₂max強度で疲労困憊に至るまでの自転車固定負荷テストをトレーニング前後で実施した.テスト中には,NIRSを用いて肋間筋および外側広筋における酸素動態が測定された.さらに,トレーニング期間中には,スパイロメータを用いて2週間毎に最大吸気圧(MIP)が測定された.吸気筋トレーニング後,IMT群においてはMIPが有意に増加したが,SHAM群においては有意な増加は認められなかった.また,疲労困憊に至るまでの運動時間は,IMT群において有意に延長したが,SHAM群においては有意な延長は認められなかった.しかしながら,両群の肋間筋および外側広筋における酸素動態には,有意な変化は認められなかった.これらの知見は,吸気筋トレーニングは呼吸筋および下肢骨格筋における酸素動態の改善よりも他の因子によって,高強度自転車運動のパフォーマンスを向上させることを示唆する.

「デサントスポーツ科学」第37巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 北田友治, 河合祥雄, 佐久間和彦, 仲村明, 内藤久士
大学・機関名 順天堂大学

キーワード

筋酸素動態高強度運動肋間筋呼吸筋力吸気筋トレーニング