信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 家庭婦人の体力におよぼすサイクリング運動の効果

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.1 Vol.1

 緒言

 生活の近代化における特徴的な様相の1つに,筋肉活動の不足がある.すなわち,機械文明の発達にともなって新たに顕在化することになった運動不足症の問題は,青少年の体力低下や成人の社会的活動力低下とも結びつき,健康づくりに深刻な影響を及ぼすrisk factorとして,多くの関心を集めるようになった1,16).
 しかし,学校体育や職場レクリエーションの機会を有する者と異なり,一般の家庭婦人が身体運動に参加する機会はきわめて少ない8,10).事実,東京近郊に住むサラリーマン家庭の主婦を対象とした調査によれば,その41%は「身体のどこかに調子のよくないところがある」と認めており9),著者らの調査でも,15歳から70歳までの健康な女子967人のうち,85%をこえる人たちが何らかのかたちで,日常生活のなかで体力の低下を感じており,実際,程度の差はあっても,運動不足を自覚している者が90%にも及んでいる.それにもかかわらず,体力づくりのための運動をしている者はわずか44%程度に過ぎず,他はほとんど身体運動の機会さえ持たないものと思われる3).
 体力と健康の維持増進,および老化にともなう機能衰退の防止をはかるには,日常生活における運動習慣の形成が重要な意義を有するといわれている16).しかし,前述のように,本来,身体運動と無縁であった家庭婦人に,新たなスポーツ活動への参加を期待することは,技術の習得に多大の時間を要するなど,理念としては理解されても,著しく実現性に乏しい.むしろ,多くの家庭婦人の日常生活に定着している自転車乗用習償を積極的に利用して,これにより,over-load principleの成立するような生体負担を検索し,これを1日の運動処方として具体的に与える方が,家庭婦人の体力づくりに対して,より現実的な効果を発揮するのではないかと考えた.
 そこで本研究では,家庭婦人の自転車乗用習慣を,体力づくりに効果のある運動負荷にまで高めることを意図し,どのくらいの強さで,どのくらいの時間,自転車乗用運動を行うことが良いかを明らかにしようとした.

「デサントスポーツ科学」第1巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 芝山秀太郎, 江橋博, 西嶋洋子, 松澤眞知子
大学・機関名 体力医学研究所

キーワード

サイクリング運動習慣