信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 化粧と運動時の選択的脳冷却効果

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.9 Vol.9

 要旨

 健康な成人8名を対象として,鼓膜温(Tty)を指標に“選択的脳冷却”が起こるかどうか検討した.環境温(Ta)35℃条件下で,下腿まで水中浸漬(42℃)による高体温時(食道温0.5℃上昇)に,秒速5.5mの顔面送風を行った時,前額皮盾温(FTsk)は2℃,Ttyは0.1℃低く抑えられた.顔面の温度感覚(TS)も低い申告であった.それらの効果により,掌握運動のパフォーマンス(EP)は37%有意に改善した.
 さらに,健康な成人7名を対象とし,選択的脳冷却におよぼす化粧の影響を検討した.Ta25℃環境下で,頭部露出型のサウナ加温(44℃)による高体温時には,化粧により前額皮層血流量は31%,FTskは0.5℃有意に抑制された.TSも高い値を申告した.しかし,TtyとEPには化粧による有意な変化は観察されなかった.
 以上の結果から,高体温時には頭部・顔面からの熱放散量増加により,選択的脳冷却が起こり,パフォーマンスを向上させる.熱中症予防の立場から,高体温を伴う運動時には化粧を控えた方がよく,積極的に顔面送風を利用すべきである。

「デサントスポーツ科学」第9巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 平田耕造*1, 永坂鉄夫*1, 野田祐子*1, 紫藤治*1, 平井敦夫*2, 平下政美*3, 高畑俊成*4
大学・機関名 *1 金沢大学, *2 金沢女子短期大学, *3 金沢経済大学, *4 金沢工業大学

キーワード

選択的脳冷却水中浸漬高体温顔面送風化粧