信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 温熱的中立を保証する衣内温度の変動幅とその身体部位差,季節差,年齢差

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.15 Vol.15

 体温調節機能向上および温熱的中立保持の両方に資する着衣条件を構築するための基礎的研究を行った.すなわち,本研究では,温熱的中立を保証する衣内温度(Tm)の変動幅にみられる部位差とこれらの年齢差や季節差を検討するため,児童(C群:10〜11歳),若年成人(Y群:20〜21歳)および高齢者(O群:60〜65歳)の男子被験者各5名に対し,春夏秋冬各季に,実際の生活下で起床後8〜12時間にわたり,温熱的中立をできるだけ保持するよう要求し,その間の胸,背,前腕大腿部のTmと滞在した環境温(Ta)を携帯用温度記録装置で測定した.また,着衣調節の内容,行動および温熱感を調査した.
 温熱的中立を保持できた際のTaには,年齢差がいずれの季節においてもみられなかった.その際のTmの変動幅の部位差は,春夏季ではいずれの群においても認められなかった.しかし,秋冬季のCおよびY群において,胸,背,上腕部のTmの変動幅には季節差がみられなかったのに対し,大腿部のそれが順次大きくなったため,Tmの変動幅に有意な部位差が認められた.しかし,この傾向はO群ではみられなかった.これらの年齢差は,C,Y群の着衣調節が上半身主体であったのに対し,O群のそれは全身で行われていたことに起因した.
 以上の結果,温熱的中立を保証するTmの変動幅は,大腿部で大きいたあに部位差が存在し,その部位差には季節・年齢差がみられた。これらの結果を体温調節の向上および温熱的中立保持の両方を満たす着衣条件を構築するために,考慮する必要性のあることが示唆された.

「デサントスポーツ科学」第15巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 井上芳光*1, 荒木勉*2
大学・機関名 *1 神戸大学, *2 兵庫教育大学

キーワード

温熱的中立衣内温度年齢差