信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF インスリン抵抗性症候群(メタボリックフィットネス)の改善のための運動・食行動支援プログラムによる長期介入研究

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.22 Vol.22

 本研究の目的は,男性耐糖能異常者(n=33,52.5±11.0歳),すなわち境界型糖尿病(IGT;n=11)および2型糖尿病患者(n=22)のインスリン抵抗性症候群(メタボリックフィットネス)の改善に及ぼす食事・運動療法を用いた長期(1-2年)介入プログラムの評価を行うことであった.全対象者において,介入プログラム後にはbodymass index(BMI),CTスキャンで評価された臍部での皮下脂肪面積(SFA)よび内臓脂肪面積(VFA),および空腹時インスリン濃度(FIRI)は有意に減少し,一方,推定による最大酸素摂取量(VO₂max)は有意に増加した.次に,聞き取り調査による介入プログラムへのcomplianceから判断したgood complianceグループ(GCG;n=17)とpoor complianceグループ(PCG;n=16)に区分して比較検討した.両群のプログラム介入前の身体的特性および諸検査値に有意差を認めなかった.GCG群では,介入プログラム後に,全ての肥満尺度(BMI,体脂肪率,WHR:waist hipratio,VFA,SFA)で有意な減少,糖代謝指標ではFIRI,HOMAモデルによるインスリン抵抗性スコアー(HOMA-IR),および75g糖負荷試験での血糖(AUCPG)とインスリンの曲線下面積(AUCIRI)の有意な低下を認めた.しかしながら,脂質代謝指標には有意な変化を認めなかった.一方PCG群では,介入プログラム後に,最大酸素摂取量と高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-c)にのみ有意な増加を認めたが,肥満尺度および糖代謝指標には有意差を認めなかった.また,両群の安静時の収縮期および拡長期血圧は,介入プログラム前後で有意な変化を認めなかった.全例での単相関分析において,Log FIRIの変化量には,BMIおよびSFAの変化量との間に有意な正相関を認めた.総コレステロール(TC)の変化量は,BMI,VFA,Log FIRI,およびAUCIRIの変化量と正相関を,一方VO₂maxの変化量との間には有意な負の相関を認めた.また,TC/HDL-cの変化量は,VFAおよびHOMA-IRの変化量との間にのみ有意な正相関を認めた.中性脂肪(TG)の変化量にはHOMA-IRの変化量との間に有意な正相関を認めた.これらの成績から,本研究で開発した介入プログラムは,インスリン抵抗性症候群あるいはメタボリックフィットネスの改善に有効に作用することが明かとなった.

「デサントスポーツ科学」第22巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 熊谷秋三*1,高柳茂美*1,甲斐裕子*1,畑山知子*1,花田輝代*2,佐々木悠*2
大学・機関名 *1 九州大学,*2 福岡大学筑紫病院

キーワード

耐糖能異常者境界型糖尿病糖尿病患者インスリン抵抗性症候群メタボリックフィットネス食事運動療法body mass index(BMI)皮下脂肪内臓脂肪