信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF スイムキャップの素材が水泳時の体温調節反応に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.24 Vol.24

 本研究では,スイムキャップの防水性が水泳中の体温調節反応に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.日頃からトレーニングを行っている男子大学水泳選手10名(年齢20.0±1.3歳, 身長174.1±6.3cm,体重66.2±6.3kg,脂肪率18.4±3.2%)を被験者とし,市販されている防水性のあるシリコンキャップ(SC)と防水性のないメッシュキャップ(MC)着用時のクロール泳による20分間泳を行った.前額面(Tfh)と後頭部(Toc)の温度および心拍数は各テスト泳中1分間隔で,鼓膜温(Tty)と体温(口腔温)(Toral)は,各テスト泳前後に測定した.また,主観的運動強度(RPE)および頭部と躯幹の温度感覚尺度(それぞれTSHとTSBと略す)をテスト終了後に測定した.Tfhは,SC,MCともに運動開始5分までは低下したが,その後,運動終了まで上昇し続けた.一方,Tocは,SCにおいて水泳中上昇したが,MCでは,Tfhの上昇にもかかわらず,水温まで低下した.運動終了後のTfhは,SCが33.70±0.82℃,MCが32.45±0.69℃であった.またTocはSCが30.85±1.18℃,MCが28.95±0.55℃と,いずれにおいてもSCの方がMCに比べて有意に高い値を示した(p<0.05).運動終了後のToralとTtyについては,SCとMCにおいて有意な差は見られなかった.しかしながら,MCのTtyは運動の前後において有意な低下があった(-0.32±0.28℃,p<0.05).TSBは,SCとMCの間に有意な差は見られなかったが,TSHはSCの方がMCに比べて有意に高かった(p<0.05).
 これらの結果は,キャップの防水性に影響されることを示しており,防水性のキャップには,頭部の熱放散を妨げ保温する働きがあると考えられる.従って,長時間のトレーニングやレースにおいて頭部の温度上昇を避けるためには水温条件を考慮して着用するキャップを選択することが望ましいと考えられる.

「デサントスポーツ科学」第24巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 松波勝*1,田井村明博*2,菅原正志*2
大学・機関名 *1 別府溝部学園短期大学,*2 長崎大学

キーワード

スイムキャップ防水性体温調節反応