信州大学 繊維学部技術データベース

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PDF 運動の日常化と虚血再灌流酸化ストレス傷害の予防

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.24 Vol.24

 慢性運動は生体内の抗酸化能力を増大させ,酸化ストレス耐性を向上させると考えられている.本研究では,肝臓虚血再灌流モデルを用いて運動トレーニングが肝臓の酸化ストレス耐性に及ぼす影響について検討した.10週齢のSprague Dawley系ラットを4群(安静・擬手術群,運動・擬手術群,安静・虚血再灌流負荷群および運動・虚血再灌流負荷群)に分けた.運動群には週5回ランニング運動を負荷して飼育し,4週間後に虚血再灌流実験を行った.虚血再灌流は肝動脈および門脈左枝を30分虚血した後,3時間再灌流することにより行った.血清glutamic-oxaloacetic transaminase,glutamic-pyruvic transaminaseおよび過酸化脂質濃度は虚血再灌流負荷により増大したが,運動トレーニングによる有意な変動は見られなかった.肝臓における4-hydroxy-2-nonenal修飾蛋白生成量は虚血再灌流により増大したが,運動群では有意に抑制された.肝臓glutathion peroxidase濃度は虚血再灌流後,運動群において有意な増大がみられた.以上のことから,肝臓虚血再灌流による肝臓過酸化脂質生成は運動トレーニングにより抑制されることが示された.これは酸化ストレスに対する抗酸化酵素の誘導感受性がトレーニングにより亢進したことに起因する可能性がある.本結果は運動の日常化が酸化ストレスに対するpreconditioningとしての有用性を示唆するものである.

「デサントスポーツ科学」第24巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 青井渉,内藤裕二,吉川敏一
大学・機関名 京都府立医科大学

キーワード

慢性運動抗酸化能力酸化ストレス耐性肝臓虚血再灌流モデル運動