信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF インソールの材質の違いがランニングに伴う溶血に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.25 Vol.25

 ランニングシューズのインソールの材質の違いが,ランニングに伴う運動性溶血に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.男子大学生8名を対象に,ランダムにそれぞれ通常のインソール(N)と衝撃吸収用素材を用いたインソール(S)の条件で舗装道路における10km走(最大心拍数の75−85%)を一ヶ月の間隔を空けて実施した.10km走に費やした時間,歩数を記録し,10km走前安静,直後,1および24時間後に採血を行い,赤血球数,ヘマトクリット,ヘモグロビン,ハプトグロビン,乳酸濃度およびクレアチンキナーゼ活性を測定した.10km走における運動持続時間,総歩数および10km走前後の血中乳酸濃度はいずれの項目とも両トライアル間に有意な差は認められなかった.
 血中ハプトグロビン濃度は両トライアルとも10km走終了1時間後に安静に対して低下する傾向があり,Nトライアルでは安静の値に対して有意(p<0.05)に低かったが,Sトライアルでは有意な変化は認められなかった.赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリットについては同様の変化を示し,両トライアルとも10km走直後に増加し24時間後には低下する傾向が認められた.Nトライアルのヘモグロビン濃度,ヘマトクリットは安静時の値に対して有意(p<0.05)に低下したが,Sトライアルでは有意な変化は認められなかった.また.これらのいずれの項目についても両トライアル間に有意な差は認められなかった.クレアチンキナーゼ活性は,両トライアルとも10km走24時間後で有意(p<0.001)に増加し,NトライアルがSトライアルに比べて10km走24時間後に高くなったが両トライアル間で有意な差は認められなかった.
 ランニングに伴う運動性溶血にはさまざまな要因が関与すると考えられるが,本研究の結果,インソールの衝撃緩衝作用が着地時の機械的衝撃を和らげ,ランニング時における溶血を軽減させることが示唆された.一方,骨格筋損傷に対しては有意な効果は,認められなかった.

「デサントスポーツ科学」第25巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 伊藤宏*1,山﨑良比古*1,下田次雄*2,島岡清*3
大学・機関名 *1 名古屋工業大学大学院,*2 中部大学,*3 名古屋大学

キーワード

インソールランニング運動性溶血衝撃吸収用素材