信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 家庭用エクササイズ支援ゲーム機(Exergame)を用いた肥満小児の減量効果に関する研究

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.30 Vol.30

 小児期の肥満は心理的ストレスの増加や将来の生活習慣病に結びつく可能性が高いことから,食習慣の改善や身体活動量の増加によって解消することが望まれている.本研究では昨今開発が進んでいる家庭用エクササイズ支援ゲーム機(Exergame)が肥満小児の肥満改善に有用なツールとなり得るか検討するため,ゲーム実施時の運動強度やエネルギー消費量,主観的運動強度を検討した(検討1).さらに1名の症例ではあるが肥満男児に対しExergameを用いた家庭での3ヵ月間にわたる肥満改善プログラムを実施した(検討2).
 検討1における対象は平均年齢10.2歳,肥満度39.5%の肥満小児10名とし,携帯型ゲーム機,ならびにExergame実施時,外遊び時の呼気ガス代謝測定,心拍数測定,主観的強度の聴取を行った.検討2における対象は年齢14歳,肥満度33.0%の男児とし,家庭においてExergameを1回30分,週3〜4回実施すること,および食習慣の改善を意識することを3ヵ月間にわたり行った.
 検討1において携帯型ゲーム実施時の歩数,心拍数,酸素摂取量,エネルギー消費量は安静時と差は認められなかった.一方,Exergame実施時の歩数,心拍数,酸素摂取量,エネルギー消費量,主観的運動強度は安静時や携帯型ゲーム機実施時より有意な高値を示し,また,保護者との外遊びを想定した活動時と有意差は認められなかった.検討2において,Exergame実施頻度は週4.6回を示し,Exergameを実施した日の歩数はしなかった日の歩数に比べ有意に高値を示した.Exergame開始前の体重84.6kgに対し,3ヵ月後には83.2kgへ減少し,肥満度は6.6%減少した.
 以上の結果より,Exergameは外遊びとほぼ同等の運動強度,エネルギー消費量を有し,家庭内における身体的不活動な時間を減少させ,定期的に継続することで肥満小児の減量,もしくは体重増加抑制に貢献できる可能性が示唆された.

「デサントスポーツ科学」第30巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 冨樫健二*1,木村穣*2,川田裕樹*3,井口光正*4
大学・機関名 *1 三重大学,*2 関西医科大学,*3 帝京科学大学,*4 国立病院機構三重病院

キーワード

小児期の肥満心理的ストレス家庭用エクササイズ支援ゲーム機肥満小児