信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 脊椎損傷患者における体力増強を目的とした機能的電気刺激を用いたトレッドミル歩行

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.30 Vol.30

 本研究では,歩行パターン機能的電気刺激(Gait patterned functional electrical stimulation: GPFES)歩行運動を下肢不全麻痺の脊椎損傷(SCI)患者に適用し,その運動強度を明らかにすることを目的とした.4ヶ月のGP-FES歩行トレーニング終了者8名の中から12分間の連続トレッドミル歩行運動を実施可能であった男性3名(損傷高位:T6,C4,T10,年齢:39,45,50歳)が測定に参加した.運動プロトコルは反転法を用い,2分間安静の後,1)GP-FESなしの歩行(Non GP-FES歩行),2)GP-FES歩行,3)Non GP-FES歩行をそれぞれ4分間ずつ連続12分間のトレッドミル歩行運動であった.GP-FESは,大腿四頭筋,ハムストリングス,下腿三頭筋,前脛骨筋に対して表面電気刺激装置を用いて行われた.運動中は連続的に酸素摂取量(ml/kg/min)を記録した.運動強度の指標としてMETs値を酸素摂取量から計算した.その結果,すべての被験者において,GP-FES歩行中の酸素摂取量(被験者A:13.4,B:18.2,C:17.0:ml/kg/min)は,はじめのNon-FES歩行時(被験者A:14.5,B:19.1,C:19.1:ml/kg/min)よりも増加し,次のNon-FES時(被験者A:13.1,B:17.8,C:17.5:ml/kg/min)には,再び減少した.はじめのNon GP-FES歩行時と比較して,GP-FES時における酸素摂取量の増加は,被験者それぞれ8.4%,4.9%,12.7%であった.GP-FES歩行中のMETs値は,被験者それぞれ,4.2,5.5,5.5METsであった.本研究の結果から,不全麻痺のSCI患者において運動中の酸素摂取量を増大させる効果,すなわち運動強度を増大させる効果が,GP-FESにあることが実証された.今後は,より大きな被験者集団および無作為抽出実験によって,不全麻痺のSCI患者においてGP-FESのトレーニング効果を検討していく予定である.

「デサントスポーツ科学」第30巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 宮谷昌枝*1,河島則天*2,T.Adam Thrasher*3
大学・機関名 *1 トロントリハビリ病院,*2 国立障害者リハビリテーションセンター,*3 ヒューストン大学

キーワード

歩行パターン機能的電気刺激脊椎損傷運動強度トレッドミル歩行酸素摂取量