信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 運動負荷中及び終了後の中心血圧測定による心血管リスク評価の有効性の検討

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.30 Vol.30

 本研究は,運動負荷中及び終了後の中心血圧測定から得られるパラメータが心血管リスクの評価に有用であるかを検討することを目的とした.成人男性34名(平均年齢51.2±7.2歳)を対象に,自転車エルゴメーターによる運動負荷試験を多段階漸増負荷法で実施した.負荷試験中は右上腕部より血圧を連続的に測定するとともに,トノメトリ法により橈骨動脈血圧波形の記録を行った.さらに,この波形を伝達関数により大動脈起始部血圧波形に変換して中心血圧を求めた.また,橈骨動脈と大動脈の脈圧比(amplification)を脈波における反射指数として用いた.amplificationは,負荷前に比べ負荷中及び終了直後では有意に上昇し,負荷後は徐々に低下して負荷前のレベルに戻る傾向にあった.高血圧,脂質代謝異常,耐糖能異常の有無により,対象者を正常血圧群,高血圧群,多重リスク群(高血圧+脂質代謝異常かつ/または耐糖能異常)に分けて比較すると,高血圧群と多重リスク群のamplificationは負荷試験中のいずれの測定点においても正常血圧群に比べて有意に低値を示した.高血圧群と多重リスク群の比較では,負荷前と負荷中のamplificationに差はなかったが,負荷後においては多重リスク群が有意に低値であった.また,負荷後のamplificationを従属変数としたステップワイズ法による重回帰分析では,年齢,高血圧を含む多重リスクの有無が独立の決定因子であった.さらに,負荷後のamplificationと左室心筋重量係数との間には有意な相関関係が認められた.
 以上のことから,運動負荷試験中に橈骨トノメトリ法で測定した中心血圧のパラメータは,高血圧を含む脂質代謝異常や耐糖能異常の集積の有無,あるいは左室肥大の程度と関連し,心血管リスクの評価において有用である可能性が示された.

「デサントスポーツ科学」第30巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 宮井信行*1,有田幹雄*2,森岡郁晴*2,宮下和久*2
大学・機関名 *1 大阪教育大学,*2 和歌山県立医科大学

キーワード

中心血圧心血管リスク多段階漸増負荷法トノメトリ法脈圧比