信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 運動時の呼吸循環応答に及ぼす低酸素暴露後の影響について

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.30 Vol.30

 本研究の目的は,低酸素暴露後の運動時における呼吸循環応答を明らかにすることである.健常男性8名を被験者とした.5分間の通常酸素ガス吸入による安静後,低酸素ガスあるいは常酸素ガスのいずれかを20分間吸入した.低酸素試行では吸気ガスを低酸素ガス発生装置より供給し,動脈血酸素飽和度(SaO₂)が75-80%になるように吸気酸素濃度(FIO₂)を調節した(FIO₂=0.10-0.12).低酸素ガス吸入後,吸気ガスを常酸素に戻し,10分間維持した.その後,常酸素下において,40%および70%最高酸素摂取量強度の運動を自転車エルゴメータを用いてそれぞれ10分間実施した.測定項目は,換気量(VE),SaO₂,心拍数(HR),血圧(BP),筋交感神経活動(MSNA)などとした.MSNAは微小神経電図法を用いて肘窩部正中神経より記録した.低酸素ガス吸入中は,換気量(VE),心拍数(HR),MSNA活動の有意な上昇が認められた.VEおよびHRは常酸素に戻した後に低酸素暴露前の値へ戻ったが,低酸素暴露による増加したMSNA活動は常酸素環境でも持続した.運動によりMSNA活動は増加したが,事前の低酸素ガス吸入による影響は認められなかった.これらの結果から,短時間の低酸素暴露が引き起す筋交感神経活動の過剰な亢進は,その後の運動時の交感神経活動および循環応答に影響しないことが示唆された.

「デサントスポーツ科学」第30巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 片山敬章*1,石田浩司*1,斉藤満*2
大学・機関名 *1 名古屋大学, *2 豊田工業大学

キーワード

低酸素暴露最高酸素摂取量強度換気量(VE)心拍数(HR)血圧(BP)筋交感神経活動(MSNA)常酸素