信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 上気道感染症ウイルス(ライノウイルス)の感受性と運動

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.31 Vol.31

 カゼ症候群は一般に軽症で自然治癒するが,多くの競技選手にとっては軽症といえども競技能力に重大な影響を及ぼす可能性がある.ライノウイルス(Human Rhinovirus; HRV)はカゼ症候群の原因のうちもっとも一般的なウイルスである.そのうちHRV14型は33℃の培養繊維芽細胞で効率よく複製し細胞傷害を起こすが,37℃では複製も細胞傷害も起こらない.なぜ低温で細胞傷害が起こるのかを明らかにするために33℃と37℃でHRV-14に感染した繊維芽細胞のmRNAの発現プロフィールの比較を行った.その結果37℃では誘導されるアポトーシス抑制因子IAPが33℃では誘導されないことがわかった.37℃の繊維芽細胞のIAPをノックダウンしてHRVを感染させたところ37℃でもHRVの複製と細胞傷害が起こった.したがってIAPは37℃前後の温度環境ではHRV感染時に細胞保護的に働いていることが明らかになった.上気道表面温度には個人差があるが,低温の場合はHRVの感受性が高くなる可能性がある.また運動後には上気道表面温度が低下することが報告されていることから一時的にHRVの感染感受性が高くなる可能性がある.いずれの可能性も今後さらに検討が必要である.

「デサントスポーツ科学」第31巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 永富良一
大学・機関名 東北大学大学院

キーワード

カゼ症候群ライノウイルス(Human Rhinovirus; HRV)上気道