信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 運動により骨格筋から分泌される Irisin が内臓脂肪減少に関与するのか?

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.35 Vol.35

 要旨

 irisinは骨格筋から分泌されるmyokineであり,白色脂肪細胞を褐色脂肪細胞化する作用が報告されている.しかしながら,ヒトの運動トレーニングに対する血中irisin濃度の応答と体脂肪減少量との関連性は明らかでない.【目的】本研究は,高齢者および若年者の有酸素性トレーニングに対する血中irisin濃度の応答と腹部内臓・腹部皮下脂肪変化量の関連性を検討することを目的とした.【方法】健常な若年者25名(22±4歳)および高齢者30名(67±7歳)をそれぞれトレーニング群(若年者15名,高齢者14名)と安静コントロール群に分け,運動介入群は8週間の有酸素性トレーニング(60-70%VO₂peak強度の自転車運動を45分間,週3回)を実施した.介入前後に安静時の血中irisin濃度とMRI法による腹部内臓・腹部皮下脂肪面積の測定を行った.【結果】若年者のトレーニング群は,運動介入前後で血中irisin濃度が変化しなかった.一方,高齢者のトレーニング群は,運動介入後に血中irisin濃度が増加し(P<0.01),血中irisin濃度の変化量と腹部内臓脂肪面積の減少量に有意な負の相関関係が認められた(r=-0.54,P<0.05).しかしながら,腹部皮下脂肪面積の変化量と血中irisin濃度の変化量と間には若年者および高齢者ともに有意な相関関係は認められなかった.【結論】高齢者の有酸素性トレーニングは,血中irisin濃度を増加させ,このirisin濃度の増加は有酸素性トレーニングによる腹部内臓脂肪量の減少に関与している可能性が示唆された.

「デサントスポーツ科学」第35巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 家光素行,佐藤幸治,栗原俊之,藤田聡,浜岡隆文
大学・機関名 立命館大学

キーワード

irisin運動トレーニング体脂肪血中irisin濃度有酸素性トレーニング60-70%VO₂peak腹部内臓脂肪量