お知らせ
ハワイ大学医学部Sim Tiki シミュレーションセンターでの研修

信州大学医学部医学教育センター
多田 剛
信州大学医学部では平成26年度より臨床実習の時間を51週から72週に延長します。これに伴い,臨床実習の期間をベーシックとアドバンスドの2つのクラークシップに別けて,ベーシッククラークシップではシミュレーション教育を積極的に取り入れる予定です。
この度私は,長野県立病院機構のご好意で,平成24年11月20,21日とハワイ大学医学部Sim Tikiシミュレーションセンターで,シミュレーション教育指導者研修を受けてきました。この研修で,私は信州大学医学部のシミュレーション教育では機材の購入や,専用の施設の充実もさることながら,シミュレーション教育を行なう人材の育成も急務であると強く感じました。
以下に今回学習してきたシミュレーション教育の要点を項目ごとに列記します。
《シミュレーション学習の流れ》
- 病院の現場や実習室にマネキンを設置する
- ファシリテータが学習者の訓練を実践させる
- できれば実習全体をビデオで録画する
- ログブックをもとにデブリーフィングする
《シナリオ作り》
- 誰に教えるかを明確にする
- 教えるポイントを絞る
- シミュレータの条件を決める
- 設定した条件をシミュレータに入力する
《実習者へのオリエンテーション》
- この実習の目的をしっかり伝える
- シミュレータの機能を十分理解させる
ex.マネキンで脈拍の触知できる部位を確認させる - シナリオに必要なシミュレータの機能を説明する
ex.当日の訓練に必要なマネキンの機能のみを説明する
《ファシリテータの役割》
- 実習の前に学習者にこの実習の目的をはっきり伝える
- ファシリテータがよかった、悪かった、の判断を学習者に伝えない
- 学習者自身ができたのかできなかったかが、わかるように導く
- 結果を見せて、本人にわからせることが大事
《デブリーフィングとは》
* トレーニングをしたら必ずデブリーフィング(振返り)が必要
* アメリカ空軍では1時間の空中戦で12時間のデブリーフィングを行っている
* 医学教育の5分のシミュレーション学習でも2〜3倍のデブリーフィングが必要
《2つのデブリーフィングの方法》
* GAS法:情報収集(gather)、分析(analyze)、まとめ(summarize)
* +Δ法:良かったことを聞く、さらに良くするにはどうすべきかを尋ねる
両者に共通する注意点
ア. 最初と最後に学習者にまとめさせると良い
イ. ビデオは教えるポイントを絞って見せる
ウ. 何でも話せる環境を作る
エ. 楽しくする
《ファシリテーションとデブリーフィングの比較》
同一点
学習者の意見を傾聴する
学習者中心とする、学習者の目的に従う、弾力的に
セッションがずれないようにコントロールする
相違点
タイミング
ファシリテーション → トレーニング中
デブリーフィング → トレーニング後
《評価での注意点》
総括的評価
学生間で設定を変えない
チーム医療での個人の評価
その人が指示を出せたかどうかを見る
完璧にできた場合
さらに高レベルの別のことを教える
あまりできなかった場合
どんなことが目標だったかを振返らせる
以上