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肝臓と肝疾患、肝移植肝臓と肝疾患、肝移植

肝臓とは?

肝臓は右上腹部、横隔膜の下にあり
人体では最大の臓器(体重のおよそ2%)です。


肝臓の主な働き (体内の化学工場)

  1. タンパク質、糖、脂肪等の代謝
  2. アンモニア、アルコールなどの解毒
  3. 胆汁産生
  4. 免疫

※胆汁とは:胆汁は肝細胞で作られ、作られた胆汁は毛細胆管に分泌され、胆管細胞から分泌された胆汁と共に肝内の細い胆管、太い胆管を流れ、肝外の太い胆管を経て最終的に十二指腸に流れていき、食物と混じり合って、脂質を消化吸収しやすくします。肝臓からは1日に約1リットルの胆汁が分泌されます。


肝臓の特徴

  1. 肝臓に入る血管
    動脈 酸素を多く含みます。
    門脈 胃や腸から戻ってくる血液で、栄養や毒を含みます。
  2. 肝臓から出て行く血管 (静脈)
  3. 胆汁を出す管(胆管と胆嚢) 胆汁は脂肪の消化吸収に役立ちます。
    胆管と胆嚢 胆管の出口は十二指腸にあり、出口には括約筋があります。
    胆嚢は肝臓の下面にあり、胆汁を貯えるナスの形をした袋です。
  4. 再生能力が旺盛
    患者さんに必要な肝臓の大きさの30%程度以上移植できれば、肝臓が徐々に大きくなり、患者さんが本来必要とする大きさになります。ドナーでも肝切除後に本来の大きさに戻っていきます。ただし、トカゲの尻尾などの再生とは異なり大きさは元通りに近くなりますが、形が元通りになる訳ではありません。
  5. 予備能力が大きい
    予備能力が大きいために、よほど肝臓が悪くならないと症状が現れないために"沈黙の臓器"などと呼ばれています。
  6. 肝臓の大きさ
    体重の2%位。左葉は肝臓の30~40%、右葉は60~70%。個人差があります。


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肝硬変症について

多くの肝疾患では肝障害が進行していくと肝硬変化してきます。その結果、肝不全、静脈瘤破裂、肝臓癌など生命に関わる状況になります。以下進行した状況での肝硬変の症状と治療について述べます。

肝不全の症状とその治療

肝不全とは黄疸、腹水貯留、出血傾向、肝性脳症を来す状態で、それぞれの症状の原因や治療は以下のとおりです。

1.黄疸
黄疸の原因となるのはビリルビンの高値で、肝臓から十二指腸へ排泄される胆汁の中の色素ビリルビンは、肝臓が働かなくなると排泄できなくなるため血中に入り、皮膚や目が黄色くなったり痒みが出たりします。
黄疸の治療には、胆汁の排泄を促す薬剤であるウルソ、茵蔯蒿湯 (いんちんこうとう)などをもちいます。体の中の血液を器械に通し、膜でろ過することでビリルビンを取り除く、ビリルビン吸着という方法もあります。また、血液の成分である血漿を他の人の血漿と交換しビリルビンを取り除く、血漿交換という方法もあります。しかし、これらの治療法は対症療法であり、効果は一過性で、しかも高額な費用を要します。したがって、このような治療により症状を抑えている間に肝機能が回復すると期待される場合にのみ行われます。

2.腹水貯留
肝臓が悪くなって硬くなると、肝臓に入る門脈に圧がかかり、血液中の水分やタンパクなどの成分が血管の外に滲みでます。その量が増えると腹に水が貯まり、腹が張ってきます。また、肝臓の機能の低下により血中のタンパクが減少しますが、このことも腹水貯留の原因となります。一方腹水が溜まること自体も血中のタンパクが減少する原因となり、悪循環になります。
腹水の治療のために、利尿剤を使って尿の量を増やしたり、塩分をひかえて体の中に多くの水分が貯まらないようにしたりします。また、減少している血液中のタンパクを増やすために蛋白を増やす飲み薬や点滴でタンパクを補充する方法もあります。腹水の為に呼吸困難を来すような場合には時には直接腹に針を刺して水を抜く方法もあります。

3.出血傾向
肝臓は血液を固まらせる凝固因子を作っています。肝機能が低下すると凝固因子が少なくなり、少しぶつけただけでも青あざ(皮下出血)ができたり、鼻血が出やすくなったり、歯を磨くと歯茎から出血したり、一度血が出ると止まりにくくなったりします。脾機能亢進症による血小板数の減少と相俟って、出血傾向が増加します。
肝疾患、特に胆道閉鎖、原発性胆汁肝硬変症などの胆汁うっ滞性の病気では、胆汁の流出が少ないために、脂溶性ビタミンの一つであるビタミンKの吸収障害がおこります。ビタミンKは凝固因子を生成するのに必要なビタミンであるために、補充等をしない場合には凝固障害が早期から見られることがあります。
出血傾向の治療はビタミンKの補充や凝固因子を含む血漿輸血(FFPの輸血)が主となります。

4.肝性脳症
腸で作られたアンモニアなどの有害な物質は、通常肝臓で分解され無害となるが、肝機能が低下すると分解する能力も低下し、あるいは肝臓を通らないルートを通ってしまうため、脳に有害な物質が行ってしまいます。その結果頭がもうろうとしたり、訳が分からないことを口走ったり、意識を失ったりということが起こります。 アンモニアは腸内で作られるため、便を出さないとアンモニアが腸に貯まり、貯まったアンモニアが血液の中に入り、脳に達して肝性脳症を起こします。そのため便秘をしないことが肝性脳症の予防となり、便を軟らかくする薬が出されます。また、アミノ酸の点滴や内服によりアンモニアを下げることもあります。また、感染症や利尿剤の過剰投与も肝性脳症を起こしやすくするので、注意が必要です。


消化管静脈瘤

肝硬変になって肝臓が硬くなると、門脈の血液が肝臓の中を通りにくくなり、門脈圧亢進症という状態となり、肝臓の近くにある細い血管がバイパスとなって直接心臓に戻るような経路が発達します。このバイパスのうち特に食道周囲の血管を通って心臓に帰ろうとする経路が発達すると、食道静脈瘤となります。食道静脈瘤の血管は壁が薄く破れやすいです。静脈瘤は食道の他に胃にできることもあります。これが胃酸や食物の刺激で破けると大出血し、場合によっては命をおとすこともあります。

静脈瘤が破れないようにするために、胃カメラ(内視鏡)をしながら静脈瘤を硬くする薬を注入したり、ゴムで縛ったりして食道静脈瘤をつぶします。食道静脈瘤が破裂した場合、食道に管を入れ、風船状に膨らませて出血を一時的に止め、胃カメラで静脈瘤をつぶします。
他に、手術的に食道に行く静脈を切除したり、食道を一度切り離してつなぎ直したりして静脈瘤をなくす方法もあります。
現在食道静脈瘤は内視鏡的な予防法が極めて有効となっていますが、再発を繰り返し、しかも手術的治療が行えないときには肝移植の適応となります。
食道静脈瘤と同様に胃に静脈瘤ができることがあります。胃静脈瘤は内視鏡的に治療することもありますが、内視鏡での治療が困難なことも多く、肝機能があまり低下していない場合には、開腹して胃の周囲の静脈瘤をとってしまうような治療を行います。このような治療がおこなえず、出血を繰り返す場合には、肝臓移植の適応となります。なお、食道静脈瘤の治療を行った後は一過性にそこに潰瘍ができるため、1ヶ月程度は移植が行えません。
食道や胃以外の腸管に静脈瘤ができることもあります。胆道閉鎖症の場合には、胆管空腸吻合部や空腸--空腸吻合部などに静脈瘤ができやすいです。食道や胃以外の静脈瘤では、部位の特定も困難な事も多く、また内視鏡治療等を行えないことが多いために、肝移植の適応となります。


肝臓癌

肝臓癌の原因は肝臓内で肝臓の破壊と再生が繰り返されることによると考えられています。この治療としては肝切除、マイクロ波やラジオ波による治療、エタノール注入による治療、動脈塞栓術、最近は重粒子治療などがあり、癌の状態や肝硬変の程度により選択されています。この中で最も根治性の高いのは肝切除です。しかし、現在存在する癌を根治できても、背景の肝硬変などは治療できないため、後に新たな癌が発生する危険性は残ります。
肝臓癌に対する治療が行えないほど肝硬変が進行しているときや、根治切除困難な肝臓癌に対しては肝移植が適応になると考えられます。ただし、数が多ければ多いほど、大きさが大きければ大きいほど移植後に癌が再発する可能性が高くなります。また、移植を考える時点で、肝臓以外に転移しているものや、肝臓内の大きな血管に浸潤しているものは肝移植の適応外と考えられます。脳死肝移植の登録には単発であれば5センチ以下、3個以下であれば最大経が3センチ以下と限定されています。また、生体肝移植であっても、保険の適用となるためには、同様の基準以内である必要があり、それ以上に進行している場合には、移植に関わる費用が全額自費となります。


その他

  1. 脾機能亢進症:肝臓を通過出来ない門脈の血液が脾臓に流れ込むため、脾臓が大きくなり、血液成分を壊すという脾臓本来の働きが亢進して、血小板が減少すると前述したように出血傾向の原因となります。白血球が少なくなると感染しやすくなることがあり、赤血球が少なくなると、貧血の症状が出ることがあります。脾臓摘出術や部分的脾動脈塞栓術などが行われますが、特に小児においては移植の成績が良好であることから、これが移植の適応と判断されることがあります。
    ※参考:脾臓の役割 脾臓は小児期には免疫に深く関わっていますが、成長とともにその役割は低下していくと考えられています。しかし、脾臓がなくなるとある種の感染症に罹患するリスクは高くなると考えられ、脾臓の摘出前に肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されています。脾臓はまた、生涯にわたって白血球、赤血球、血小板といった血球が老朽化した際にこれを壊すことを行っています。門脈圧亢進などがあり脾腫がおこると、この血球破壊の仕事を過剰に行うようになり、血球が減少します。

  2. 肝肺症候群と肺高血圧症:肝硬変になると、肺の血管に異常がおこることがあります。一つは肺内シャントと呼ばれ、肺の末梢血管が太くなり肺胞での酸素の交換にあたらない血流が増え、その結果体内の酸素が不足する場合であり、肝肺症候群と呼ばれています。この病態は肝移植で改善しますが、進行した肝肺症候群では予後が不良となり、移植が行えないこともあります。もう一つは肺高血圧症と呼ばれる病態で、肺血管は逆に縮まっている状態となります。原因は不明で、突然の意識消失で発症することがあり、注意を要します。肺血管を拡張させる薬を必要とし、日常生活に酸素吸入は不可欠となるので、早期発見、早期の肝移植が必要で、収縮期肺動脈圧が高いと手術には耐えられないとされています。

  3. 腎機能障害:肝硬変の非代償期や劇症肝炎などの重症肝疾患があるとしばしば進行性の腎不全が見られます。利尿剤の投与による循環血液量の低下や、肝不全に伴う何らかの物質が関与している可能性があります。また、肝臓を悪くする原因が直接腎臓に悪影響を与えることもあります。腎機能の低下は移植後の予後に影響を与えるとされます。

  4. 耐糖能障害・糖尿病:肝障害が強い状態では、体のインスリンに対する反応が低下することにより耐糖能障害が見られます。

  5. 骨粗鬆症:肝障害に伴う栄養障害、特にビタミンDの吸収障害により、骨粗鬆症をおこしやすくなります。

  6. 成長障害:小児においては肝臓での代謝障害などによって成長障害がある場合、肝移植の適応状況と考えられます。

  7. 頑固な皮膚掻痒感:胆汁の排泄が不良であることに伴い、胆汁性の頑固な掻痒感が出現することがあります。痒みに対しては、様々な痒み止めの薬がありますが、一般的に肝臓に起因する痒みは難治性です。小児においては学習等に集中できないような掻痒感の存在も肝移植の適応状況と考えられます。

  8. 繰り返す胆管炎:胆道閉鎖症で葛西手術後は肝門部の肝臓表面に腸管が直接縫合されているので、腸内細菌が肝臓内に逆行性に上行し肝内胆管で感染を起こしやすくなります。これを胆管炎と呼んでいます。胆管炎を頻回に繰り返す場合、肝移植の適応と考えられます。

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肝移植の説明

肝臓移植とは

臓器移植とは、臓器の機能が低下したり、あるいは働かなくなったりして苦しんでいる患者さんに健康な臓器を移植し、臓器の働きを回復させる治療方法です。移植を受ける人を『レシピエント』といい、臓器の提供者を『ドナー』、移植される臓器を『グラフト』と呼びます。
肝臓は非常に複雑な機能を持っており、腎臓の悪い患者に対する透析のように機械での代替は難しく、肝臓本来の機能が低下していけば患者さんはいずれ死亡してしまいます。患者さんの機能を失ったあるいは低下した肝臓を健康な肝臓と交換することにより、患者さんの命を救う医療が肝臓移植です。肝臓移植においては、通常レシピエントがもともと持っている肝臓はすべて摘出し、ドナーから提供されたグラフトを元々肝臓があった場所に植えます(血管、胆管を縫う)。非常に限られた状況においてレシピエントの肝臓を一部残すことがあります。新しい肝臓は順調であれば30年以上機能することが知られており、当院でも最長例は20年を超えて肝機能が維持されています。


肝移植の歴史

肝移植は肝硬変を始めとした肝疾患の終末的な状態に対する唯一の治療法であり、海外では1960年代から行なわれています。1980年以降は移植数が飛躍的に増え、末期肝疾患に対する一般的治療として定着しています。その治療成績も向上し、アメリカではグラフト生着率が1年では80%、5年で65%、患者生存率が1年では87%、5年で75%と報告されています。
日本では、1997年に臓器移植法が施行されましたが脳死からの臓器摘出は少なく脳死肝移植は106例で、86名が生存されています(2011年2月28日現在)。一方、1989年から開始された生体部分肝移植が主流であり、2009年末までに5721名の患者さんが生体部分肝移植を国内で受けており、その5年生存率は77%とされています。信州大学においては1990年からこれまでに278回の生体肝移植と9回の脳死肝移植が施行され、226名が生存しています(2011年2月28日現在)。


肝移植の方法

移植の方法として次の方法があります。

  1. 脳死肝移植:脳死者から提供された肝臓を移植。
    1. 脳死全肝移植:全肝臓を移植。
    2. 脳死部分肝移植:肝臓を患者さんの体格にあわせて小さく切除し移植。
    3. 脳死分割肝移植:肝臓を2つに分割し2人の患者さんに移植。
      脳死肝移植の第一候補が小児の場合に施行されることがあります。
  2. 生体部分肝移植:近親者の自発的好意により、肝臓の一部を移植。
  3. 自己肝温存移植:限られた病気において、自分の肝臓を一部残して移植することがあります。



生体肝移植と脳死肝移植の比較

脳死肝移植には生体肝移植と比較して以下のような利点と欠点があります。


  1. 生体肝移植は健康なドナーを傷つけるという問題がありますが、脳死肝移植は脳死になった方からの命のプレゼントであり、健常者を傷つけるということがありません。

  2. 生体肝移植は適切なドナーがいないと施行できません。一方脳死肝移植は肝移植の適応があれば誰でも施行できるチャンスがあります。

  3. 生体肝移植では一つの肝臓で、ドナーもレシピエントも生きるようにしなければならず、レシピエントがもらえるグラフトの大きさは脳死肝移植より生体肝移植では小さいです。また、肝臓に付着する血管もドナーに残るものを傷つけないようにしなければならないので、生体肝移植では肝臓に付着する血管と胆管は細く短く再建に際し不利です。

  4. 生体肝移植は患者さんのコンディションを考えて計画的に良い時期に移植が行えますが、脳死肝移植は何時ドナーが出現するかわからず、また、ドナーが出現した場合緊急手術になります。このため、その際の患者さんの状態は良いとは言えず、日本の現状を考えると待機期間が長期になるために患者さんの状態は悪くなることがあります。

脳死肝移植の場合ドナーに十分な検査が行えず、また、脳死に至る経過の中で肝臓がダメージを受けている可能性があります。臓器摘出後搬送にかかる時間も生体肝移植に比べ時間を要しこのことも肝臓がダメージを受ける原因となります。したがって、生体肝移植の方がグラフトの質は良い可能性があります。

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