唾液腺癌の予後因子の検討
○栗田 浩、小林啓一、成川純之助、小池剛史、倉科憲治、峯村俊一
唾液腺癌の予後は多彩で、良好なものから極めて不良なものまで様々である。
【目的】本報告の目的は、唾液腺癌の予後を左右する臨床的および組織学的因子を明らかにすることである。
【対象】1985年から2002年の間に当科にて外科的切除を主体とした根本的治療を行った唾液腺癌一次症例29例。
【方法】予後に影響を及ぼすであろうと考えられた臨床および組織学的因子(性別、年齢、T分類、N分類、腫瘍の発生部位(Major gland vs. Sublingual & minor gland)、病理組織型(Low grade tumor vs. High grade tumor)、被膜の有無、周囲組織への浸潤の有無、傍神経浸潤の有無、脈管侵襲の有無、サージカルマージンの状態、化学療法の有無、放射線照射の有無)を調査し、無症候期間との関連を統計学的に検討した。経過観察期間は中央値で55か月(IQR: 63.6)であった。
【結果】5年および10年の無症候生存率はともに69.8%であった。単変量解析(Kaplan-Mayor estimate)の結果では、女性が男性より有意に予後良好(P<0.05)であった。また、病理組織学的にLow grade tumor、および、被膜があり周囲組織への腫瘍の浸潤が見られなかった症例では、腫瘍の再発、転移等は見られなかった。多変量解析(Coxの比例ハザードモデル、病理組織型および腫瘍の浸潤の有無は共変量として含まれず)の結果では、女性で予後が良好である傾向(P=0.59)を認めた。
【結語】今回の検討の結果から、病理組織学的な腫瘍のグレード、および、周囲組織へ浸潤の有無は唾液腺癌の予後因子となることが示唆された。
|