信州大学医学部歯科口腔外科
Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School of Medicine

第28回日本頭頸部腫瘍学会総会
(2004年6月17-18日、福岡市)
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脳転移をきたした舌原発扁平上皮癌の1例
○ 成川純之助、栗田浩、小林 啓一、小池 剛史、倉科 憲治

 口腔扁平上皮癌の脳転移は比較的まれとされ、われわれの渉猟し得た範囲では口腔領域では4例の報告をみるのみである。今回、われわれは、舌原発扁平上皮癌の脳転移と考えられた1例を経験したのでその概要を報告する。
 症例:58歳、男性。主訴:右舌縁の摂食時痛。現病歴:平成13年12月頃、右舌縁部の接触痛を自覚するも放置。平成14年1月4日、近歯科医院を受診し、近病院歯科口腔外科を紹介された。SCCの診断を得、2月18日、手術目的に当科へ紹介され初診。現症:右舌縁に潰瘍を伴い易出血性の19×14mm大の腫瘤を認めた。境界は不明瞭で周囲に硬結を触知。頚部は左右とも小指頭大の扁平で圧痛を認めないリンパ節を各1個触知。画像所見:CTでは原発巣は明らかでなく頚部リンパ節転移は認めなかった。処置および経過:平成13年2月21日、舌部分切除、遊離植皮術を施行。術後原発巣のコントロールは良好であったが、約2ヶ月後、右側頚部リンパ節転移が確認され、5月27日、右側全頚部郭清、舌部分切除、遊離皮弁再建術施行。その約1ヶ月後、左側頸部リンパ節にも転移を認め、7月8日、左側機能的頚部郭清術施行。その後、原発巣、頚部のコントロールは良好であったが、平成15年2月下旬、肺転移を認めた。8月初旬より見当識障害などが出現し、脳MRIにて左側前頭葉および両側小脳半球内に転移を認めた。11月、多臓器転移により永眠した。
唾液腺癌の予後因子の検討

○栗田 浩、小林啓一、成川純之助、小池剛史、倉科憲治、峯村俊一

 唾液腺癌の予後は多彩で、良好なものから極めて不良なものまで様々である。
【目的】本報告の目的は、唾液腺癌の予後を左右する臨床的および組織学的因子を明らかにすることである。
【対象】1985年から2002年の間に当科にて外科的切除を主体とした根本的治療を行った唾液腺癌一次症例29例。
【方法】予後に影響を及ぼすであろうと考えられた臨床および組織学的因子(性別、年齢、T分類、N分類、腫瘍の発生部位(Major gland vs. Sublingual & minor gland)、病理組織型(Low grade tumor vs. High grade tumor)、被膜の有無、周囲組織への浸潤の有無、傍神経浸潤の有無、脈管侵襲の有無、サージカルマージンの状態、化学療法の有無、放射線照射の有無)を調査し、無症候期間との関連を統計学的に検討した。経過観察期間は中央値で55か月(IQR: 63.6)であった。
【結果】5年および10年の無症候生存率はともに69.8%であった。単変量解析(Kaplan-Mayor estimate)の結果では、女性が男性より有意に予後良好(P<0.05)であった。また、病理組織学的にLow grade tumor、および、被膜があり周囲組織への腫瘍の浸潤が見られなかった症例では、腫瘍の再発、転移等は見られなかった。多変量解析(Coxの比例ハザードモデル、病理組織型および腫瘍の浸潤の有無は共変量として含まれず)の結果では、女性で予後が良好である傾向(P=0.59)を認めた。
【結語】今回の検討の結果から、病理組織学的な腫瘍のグレード、および、周囲組織へ浸潤の有無は唾液腺癌の予後因子となることが示唆された。

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