信州大学医学部歯科口腔外科
Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School of Medicine

第29回日本口腔外科学会中部地方会
(2004年6月12日、穂積市)
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出生時より口蓋にみられた血管平滑筋腫の1例

 ○鎌田孝広、栗田浩、成川純之助、酒井洋徳、小池剛史、倉科憲治

 血管平滑筋腫は血管壁平滑筋細胞に由来する良性腫瘍で、その多くは中高年女性の下肢に発生し、口腔領域では比較的まれな腫瘍である。発生原因はエストロゲンの影響、外傷、機械的刺激の関与が考えられているが明らかになっていない。今回我々は女児の口蓋に出生時よりみられた血管平滑筋腫の1例を経験したので報告した。
患者:生後6ヶ月の女児
初診日: 2003年6月13日
主訴:口蓋部腫瘤(母親より)
現病歴:母親が出生時(39週3日3028gで出生、正常分娩)より患児の口蓋部の腫瘤に気付き同院産婦人科より当院紹介され受診した。
全身所見:補乳障害等は認めず、正常に発育していた。顔貌は左右対称であり、所属リンパ節の腫脹は認めなかった。
口腔内所見:口蓋正中部切歯孔付近から直径2@、長さ20@のヒモ状の腫瘤を認めた。
臨床診断:口蓋部良性腫瘍
処置及び経過:腫瘍切除を行い圧迫止血した。切除部の治癒は良好であった。現在まで再発認めず経過良好である。
病理組織学的所見:比較的太い血管と、その壁から連続するように増殖する平滑筋繊維が認められた。
病理組織学的診断:血管平滑筋腫

舌下腺に発生したMucinous adenocarcinomaの一例

 ○武井哲兵 中塚厚史 小林啓一 栗田 浩 倉科憲治

 mucinous adenocarcinomaは、1991年に改訂されたWHO分類に唾液腺悪性上皮性腫瘍の1型として初めて記載された腫瘍でる。今回われわれは、舌下腺に生じたmucinous adenocarcinomaの1例を経験したので報告した。
患者:54歳、男性。
初診:平成15年7月30日
主訴:左口底部の自発痛、左舌縁部の違和感
既往歴:胃癌、頸椎損傷
現病歴:平成15年1月より左顎下部の違和感、5月に左口底部に疼痛を自覚した。症状の軽減を認めないため近医院を受診し、生検を施行した結果mucinous adenocarcinomaと診断された。平成15年7月30日、加療目的に紹介初診となった。
現症:口腔外では左下顎角の前方で下顎骨内側に約25@大の硬結を触れた。明らかな頚部リンパ節は触知しなかった。口腔内では左舌口底移行部に境界明瞭で表面に潰瘍を伴う35×20@大の腫瘤を認め、周囲に硬結を触れた。 
画像所見:造影CTでは左舌下腺部に造影効果に乏しく境界明瞭な30×25@大、内部均一な病変を認めた。造影MRIにおいては病変周囲の濃染を、T2強調像では境界明瞭、内部均一な病変を認めた。頚部USでは左上内深頚部にやや腫大したリンパ節を認め、転移を疑った。
処置及び経過:T3N1M0、Stage「と診断し、8月11日全身麻酔により左舌半側切除術、左全頚部郭清術、左前腕皮弁による再建術を施行した。術後3週より放射線治療を開始し、総量70.2Gy照射した。術後3ヶ月よりTXT110mg、CBDCA490mgによる化学療法を1クール施行し、11月28日経過良好のため退院した。術後8ヵ月経過した現在、再発等なく経過良好である。

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