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シリケートナノシートを骨格とした超分子集合体形成

スメクタイトと呼ばれる粘土鉱物は、右図のように1nmのシリケートナノシートが何層もつみかさなった構造です。
その層間にはアルカリ金属イオンを含んでおり、様々な陽イオンと交換することが可能です。スメクタイトの粉末を一旦水に分散すると、一枚一枚がはがれて、コロイドのような分散液がえられます。ここに、有機陽イオンを添加すると、不思議なことに、ナノシートと有機陽イオンが自発的に集合して、有機陽イオンが層間に挟まった化合物が得られます。
界面活性剤をつかえば、生物の細胞膜などを構成する脂質二分子膜のような構造が形成し、小さい陽イオンをつかえば、ちいさな穴が無数にあいた、ゼオライトに似た物質が形成します。反応前と後を比べていると、あたかも分子レベルの積み木をしているようです。

このような発想のもと、最近、ある有機陽イオンと粘土を組み合わせると、カフェインを吸着する構造ができることを知りました(Okada, Oguchi, et al., Langmuir)(下図参照)。
この分子レベルの狭い空間の大きさを設計すれば、ある特定の分子だけを選択的に吸着できると期待されています(総説:Chem.-Asian J., 7, 1980-1992 (2012)。
もし、この分子だけを吸着させたいと思ったとき、この空間をうまく設計して実現できれば、活性炭など身の回りの吸着剤では実現できない、高付加価値な吸着剤が得られそうです。また、この層間にうまく触媒活性点を固定できれば、酵素のような触媒として機能しそうです。
私たちは将来的に無機物質から人工酵素をつくりあげることを夢見て研究をすすめています。
粘土の実用性を高めるには、その「かたち」を整えることが欠かせません。「かたち」はマル、板、棒など様々です。身の回りの材料は、この「かたち」の組み合わせではないでしょうか。私たちは最近大きさのそろったマルの粒子表面で粘土を結晶成長することを発見しました(J. Phys. Chem. C, 116, 21864-21869 (2012))。 
不思議なことに表面にある粘土粒子は、水に浸しても剥がれてくることはありません。また粘土層の厚みは数十ナノメートルと薄いので、この粒子をうまく詰めると、高性能なカラム充填剤などに応用できそうです(特願2014-180909 カラム充填剤及び高速液体クロマトグラフィー装置)。他にもまだ色々な用途がありそうで、研究を進めているところです。