従来、都市域におけるリモートセンシングデータを用いた研究では、地表面被覆材料のマルチスペクトル空間における分光反射特性に着目した自動分類が主であった。地表面が平坦であれば被覆材料の反射特性に対応して、被覆物の分布状況を反映していると考えられている。そして実際にその解析精度は高い。
しかし都市域においては建物の凸凹などによって陰影が生じ放射照度分布が不均一になり、リモートセンシングデータに影響を及ぼしている、ということが既往の研究で明らかになっている。また従来の分光反射特性を利用した分類では、研究者が設定したエリアを教師として、あらかじめ選定したカテゴリーに割り振ることを行っていた。そこでは、例えば中心市街地であることは判別できても、判別された中心市街地がどのような建ぺい率であるのか、高さはどの程度なのかといった、市街地の特徴パラメーターの抽出はできなかった。
そうした特徴を解明するためにいくつかの試みが報告されている。斉藤等はLANDSAT TM画像のテクスチャを利用して、市街地の特性を抽出する方法を提案した。この研究により、テクスチャを利用して市街地の特性を抽出することの可能性が示されたが、その精度は十分ではなかった。
また近年都市域の研究に、全天候型センサである合成開口レーダ(SAR)が取得するデータは対象物の三次元形状に大きく依存していることから、従来の被覆物の分光反射特性に着目した解析と組み合わせることによって、都市域の解析への応用が期待されている。
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