近年、都市における、土地被覆の人工化やエネルギー消費の増大により、夏季の屋外環境は急速に悪化している。それに伴い、建築外部空間も室内と同様にその重要性が認識されるようになった。特に夏季における熱環境問題が深刻になりつつある中で、熱環境改善の一手法として緑化による熱環境緩和が期待されている。このため、緑化による夏季における熱環境緩和効果を明確にすることは、熱環境改善および都市計画の観点からも非常に重要であると考える。
本研究者らはこれまでに、リモートセンシングデータを用いて、都市内の緑被の把握を行ってきた。例えば、超高分解能衛星IKONOSを用いることで、都市内における植生一本一本に至る詳細な緑被の抽出を行ったり、緑の活性度を「質」、緑被率を「量」とし、観測時期が異なる複数のランドサット5号TMデータを用いて京都市の林地、農地の解析を行い、評価を行った。
一方、建物の熱負荷シミュレーション計算や有効パッシブ手法の検討を行うために気象観測を行い、特に長野市においては、土地利用や標高の違いによる気象データやその特性を明らかにしてきた。例えば、長野市を対象に500m×500mのメッシュ毎の気温と相対湿度の実測データに基づく気象マップを作成したり、気象項目を7項目に増やし、約30m×30mのメッシュによる気象マップを作成した。
これら一連の研究により、リモートセンシングデータ(IKONOS)を用いることで都市内の緑被の詳細な把握が可能であることを示し、内陸の地方都市である長野市における様々な気象の実態を明らかにすることができた。しかし、作成した気象マップのメッシュは約30m×30mとマクロな視点で作成したものであるため、土地利用や標高の違いによる気象データやその特性は明らかになっているが、樹木や、芝生等の緑被そのものが与える熱環境緩和効果については明らかになっていない。
そこで本論文では、まず気温の実測により、緑被の熱環境緩和効果について気温の実態調査を行った。次に実測データを元に、熱収支状況を算定し、地表面が大気に与える熱量を定量的に明らかにする。そして、面的情報が得られ、従来の衛星の数倍にも及ぶ分解能をもったリモートセンシングデータ(IKONOS)を用いて、緑被の分布を詳細に把握し、得られた実測データおよび、熱収支シミュレーション結果と土地被覆状況から、気温の推定を行い、4mメッシュの気温分布マップを作成することで、緑被による熱環境改善効果の評価を行うための一手法とすることを目的とする。
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