近年の環境意識の向上に伴い、屋外環境、特に都市域での環境に関する研究が数多く行われている。都市スケールでの熱環境制御としては、緑地計画や「風の道」の設置などによって地域の気温や風、放射熱を調整する努力が進められているが、このような手法を有効に活用するためには、地域の気候環境を定量的に把握しておく必要がある。地域における微気候を捉えるには、建物を含む地表層への蓄熱や天空への放射、大気への対流伝熱や蒸散による潜熱移動など様々な因子の定量的な把握が必要である。 本研究室での既往の実測調査から土地利用毎の気温、相対湿度、地表面温度には相関があり約20キロメートル四方の範囲で微気象が存在することは確認されているが、人工物、植物など、地表面そのものが伝達、放射する熱量については考慮されていない。また、熱収支と放射収支に着目した屋外熱環境実測は大都市で行われているが、夏季におけるデータが主で季節や気候特性、土地被覆の条件が違う場合のデータの蓄積は足りていないと言える。 そこで本研究では、将来、長野において屋外温熱環境シミュレーションを行うことを見据え、その際に利用可能となる屋外温熱環境データを蓄積することを目的とし、日較差が大きい長野の秋期においてコンクリート面、アスファルト面、土面、芝生面、樹冠下面での温熱環境の実測を詳細に行った。そしてそれらの結果より、土地被覆別の放射収支特性と熱収支特性について検討した。 |