都市の環境を考える際に気候は重要な要素である。気象庁の気温データによれば、旧平年値(1960〜1990年)に比べ新平年値(1970〜2000年)が上昇している。平年値とは、「平均的な気候の気候の状態を表す指標及び現在の気候の状態を把握する指標」として用いられているものであり、30年間の平均値である。気象庁管轄の気象観測所(管区気象台、測候所、アメダス)における気象データでの統計である。気温の上昇に関しては、二酸化炭素やメタンガス等の温室効果ガスの増加と言った地球的規模での変動が一つの原因とされている。しかし、無漏田、首藤らの研究によって、観測点周辺における土地被覆状況の違いにより、観測地点周辺に気候変化が生じることが報告されている。よって、気温の変化は、温室効果ガスの増加によるマクロ要因に加え、観測点周辺の土地被覆状況変化が引き起こすエネルギー消費、熱容量の増大によるミクロ要因を考えるべきである。そして両者の影響を把握することは、都市における熱収支を考える際に重要な基礎データになる。 本研究は、土地被覆状況変化による気候変化について解析を行い、土地被覆状況の変化が観測点の気温に与える影響を把握する事を目的とする。観測点周辺に気温上昇が生じる原因として、緑地・水面の減少、人工被覆物の増加が挙げられている。そこで15年の間隔がある2時期のリモートセンシングデータによる気象観測点周辺の土地被覆分類をおこなう。気象観測点がどのような周辺環境に立地し、周囲の土地被覆はどのように変化したのかを明らかにし、気温変化への影響を解析する。 |