近年、ヒートアイランド対策の一つとして「風の道」が社会的関心を集めている。良好な都市環境を実現するためには、各種要因を総合的に考慮した環境の予測、評価が必要となる。数値流体力学(computational fluid dynamics :CFD)を利用することで、効果を予測し、適切に考慮することは、快適な都市環境を計画する上で極めて重要であるとされている。 長野市では、裾花川谷から発生する冷気流である山風が晴れた日の夜間に吹き降ろされることが確認されている。この長野市特有の山風を市街地に引き込むことは、長野市におけるヒートアイランド対策として有効であると考えられている。 本研究では、実在市街地を対象とした風通しの検討を行うことを目的とし、CFD解析を用いて、2005年のワークショップにおいて「山風を遮っているのではないか」という意見が出された長野県庁とその周辺の風環境を把握する。また、県庁の敷地内において実測を行い、実測結果とシミュレーション結果との比較によって再現性を検証する。その上で、ワークショップで提案された意見を実行することによってどの程度の効果が得られるのかを把握するため、出された提案を基にケーススタディとしていくつかのシミュレーションを行い、実在市街地を対象とした風通しの検討を行うことを目的とする。 |